Peak Design トラベル三脚 カーボン
カメラをベルトなどに装着するクリップ、簡単に長さ調節ができるカメラストラップやカメラバッグなどを製造・販売するPeak Design(ピークデザイン)の三脚です。独特な断面形状の脚や雲台の構造で小型化された写真用の三脚で、脚部の素材にアルミ合金を採用したモデルとカーボンファイバーを採用した製品の2種が、同一のデザインで販売されています。
価格は少し高めで、メーカーホームページでの表示価格では11万円強です。この金額を出すと、SachtlerのAce Mとカーボン三段脚のセットが買えると考えると、何か一つ動画用の三脚を購入しようと検討中ならば、まずはAce Mのセットを買った方が良いかもしれません。でも、ほぼ手持ちでの撮影が中心で、三脚は予備的に持参するような用途には小型軽量で優れた三脚です。
私は機材が軽量であることを優先するので、カーボンモデルを使用しています。
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Peak Designのトラベル三脚
INDEX
脚の伸縮時の操作
前回記載したジッツォの三脚とマンフロットのヘッドを組み合わせたものをしばらく使用していたのですが、脚の伸縮操作に時間がかかるのが不満でした。そんな時に、Peak Designのホームページでこの三脚の伸縮操作の素早さをアピールしているのが気になって購入を検討しました。脚1本分のロックレバー全てを一度にロック解除できるよう工夫されたデザインで、ジッツォのパイプ脚の伸縮操作よりは、はるかに素早く操作できます。
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脚伸縮時に操作するロックレバーは開閉方向を揃えて並んでいるので、一度に開閉動作を行える
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ロックレバーを開いた状態
細さに反して安定している脚部
脚一本づつをみると、最大伸長時に引き出す最も細い脚は華奢で頼りなさを感じます。しかし、実際に全ての脚を引き出した状態で3本の脚で立たせてみると、案外安定します。撮影時に三脚にかかる捻りの力は、回転方向です。最大伸長状態で立てた三脚のヘッド部分を左右に捻るように力をかけても、大きくたわむことはありません。私はお店の展示品でこの捻りを試して案外安定していることを確認できたので、購入を決めました。脚パーツの扁平したような独特な断面形状が三脚の捻り方向への強度を保っているのかもしれません。
カメラを載せて撮影をしてみても、FX30(APS-Cセンサー)と18-105mmの組み合わせであれば、三脚の剛性不足を感じるような揺れはありません。
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四段伸縮脚の最も細い脚はかなり細い
取り外し可能なセンターポール
ビデオ用三脚には無い利点として、写真用三脚にはセンターポールがあります。なお、この三脚ではセンターコラムと呼んでいますが、ここでは一般的なセンターポールという呼び方をします。
三脚の微妙な高さ調整は、脚の伸縮による高さ調整よりもセンターポールでの微調整の方が素早く行うことができます。小型なミラーレスカメラでの撮影ではこういった写真用三脚の利点は活用したいところです。
この三脚はジッツォの三脚と同じような仕組みで、脚の開閉部分のストッパーを操作して脚の開閉角度を変えることができます。開角度を広げることでローアングル撮影にも対応できるのですが、この際に邪魔になるセンターポールを付属の工具で簡単に取り外すことができます。tr04_photo_05でセンターポールに見える継ぎ目部分で分割することができます。
ロケ現場でこの分解作業を行うかというと微妙に面倒な作業ですが、追加のパーツ購入なしにローアングル撮影に対応できるのはとても便利な工夫だと思います。
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ボールの頂上部にネジが設けられており、そのネジを緩めてセンターポールを分割することができる
カメラ取り付け部
この三脚はPeak Design製らしく、カメラの取り付けには同社の「キャプチャ」というカメラクリップなどで使用されているアルカスイス互換のクイックプレートを使用します。三脚にはクイックプレートが一枚付属しますが、後述するビデオ用三脚ヘッドを取り付ける場合などには1枚追加購入しておくと便利です。
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三脚ヘッドへのカメラの取り付けは1/4や3/8インチネジではなく、Peak Designのカメラプレートで行う
ユニバーサルヘッドアダプター
この三脚専用の別売アクセサリーとして、ユニバーサルヘッドアダプターというパーツが販売されています。三脚に標準装備されたボールヘッドを取り外し、ビデオ用ヘッドを取り付けるために3/8インチネジが取り付けられたフラットヘッドに変更するためのパーツです。
このユニバーサルヘッドアダプタに交換すると、水平調整は前回記載したNEEWERのレベラーのようなパーツをビデオヘッドとユニバーサルヘッドの間に追加しなくてはなりません。しかし、この三脚にはボールヘッドが標準で装備されています。このボールヘッドは保持力も高く、小型のビデオ用ヘッドとカメラをのせて使用した時に、パンやティルト操作で傾いてしまうようなことはありません。折角ボールヘッドが装備されているので、動画撮影時の水平出しに使わないのは勿体無いように感じます。
ビデオ用ヘッドと脚部との接合部分には、3/8インチメスネジが多く使われています。この部分に1/4→3/8ネジアダプタを利用してPeak Designのアルカスイスプレートを取り付ければ、三脚のボールヘッドにビデオ用の三脚ヘッドを取り付けることができます。こういった方法でビデオ用のヘッドを取り付けているので、私はユニバーサルヘッドアダプターは使用していません。
ボールヘッド
この三脚のボールヘッドは脚部の凹凸に合わせてボールヘッドの構造部が収納されるよう配慮されるなど、コンパクト化にも気をつかった凝ったつくりです。近年のボールヘッド全般に言えますが、ボールジョイント部を締め付けた際の保持力は高く、ヘッドの安定性は高いです。
ボールの外周を3点プラス上部から押さえつけることでボールを固定しているようですが、カメラを縦位置にセットする際にボール支持部が邪魔をするため、少し工夫が必要です。
ボールの外周を3点で支持しているために、カメラを右に90°傾けることができる状態の時に、反対の左に90°傾けようとすると、ボールの支持パーツが邪魔になります。こういった場合は、カメラの取り付け向きを90°回転させてボールのパーツの位置を変化させる必要があります。カメラをヘッドに固定するアルカスイス互換プレートは正方形なので、カメラの取り付け向きを90°変えるのに手間はかかりません。これは、俯瞰撮影などの際にカメラを前後に90°傾ける場合も同じです。
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ボールヘッド部分
重量とサイズ
脚部はカーボン製ですが、ボールヘッドやセンターポールは剛性を確保するためか金属素材で作られています。このボールヘッドやセンターポールが結構重く、全体としては意外と重い印象です。それでも重量は1.3kgと、最大伸長時に150cm程度のカメラの高さを確保できる三脚としては軽量な部類に入ると思います。この高さまで伸びると、カメラのレンズをほぼ大人の目線の高さに(身長によりますが)設置することができ、通常の撮影では十分な高さを確保することができます。前述のセンターポールの分解によるローアングル撮影を含めると、かなり幅広い高さに対応することができます。
格納時のサイズは長さが40cm弱、直径が8cm強で、Peak Design製バックパックのサイドポケットに差し込むことができる大きさです。
付属品
センターポールの内部には折りたたみ式のスマートフォンアダプタが内蔵されています。スプリングを内蔵したアダプタは、ある程度の範囲で大きさの異なるスマートフォンを固定することができます。このアダプタは、アルカスイスプレートと同じ形状になるよう切り欠き加工がされていて、カメラプレートなしで三脚ヘッドに取り付けることができます。「マルチカメラ収録の予備機にiPhoneを」で記載したように、サブカメラとしてiPhoneを使用する際に便利な付属品です。
細かい部分まで操作性に配慮されていると感じさせるのが、センターポールからこのスマートフォンアダプタを取り出す時です。磁石が仕込まれていて、ポール内からストンと落っことすことなく取り出すことができます。
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スマートフォンアダプタは、センターポール下部に折りたたんだ状態で格納されている
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スマートフォンアダプタを展開したところ
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スマートフォンアダプタは底部がアルカスイスプレートと同じサイズにカットされており、アダプタなしで直接三脚ヘッドに取り付けることができる
センターポールの分解や脚の伸縮ロックレバーの調整用に、洒落たデザインの六角レンチが付属します。軟質樹脂のホルダーで脚部に装着することができ、特別に工具を持参しなくとも簡単な分解やメンテナンスができます。このレンチはPeak Design製のカメラプレートの脱着にも使用できるサイズです。Peak Designのカメラプレートは脱着に六角レンチが必要になるので、三脚にレンチが付属しているのは便利です。
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付属の六角レンチは軟質樹脂製のホルダーで脚部に取り付けることができる
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開くと2種類の六角レンチとして使うことができ、三脚のメンテナンスやカメラプレートの付け外しにも使用できる
また、ソフトケースが付属します。おまけのケースではありますが、カメラバッグも手がけるメーカーらしくクッションの入った生地や止水ファスナを使うなどしっかりとしたケースです。サイズがピチピチで、収納時にはボールヘッドの向きを工夫しないとファスナーを閉めるのが困難です。
載せるビデオ用ヘッドが課題
この三脚で動画撮影を行うために、ジッツォのビデオ用ヘッドを取り付けてみました。動くものをフォローするような操作ではまずまずな操作感なのですが、ゆっくりとしたパンやティルトでは今ひとつに感じました(このビデオ用ヘッドについては、別の機会に記載します)。
脚部の安定性に大きな問題を感じないだけに、この脚のサイズ感に合うビデオ用のヘッドがあればかなり便利だと思うのですが、適当なものがなかなかないのが残念なところです。あまり大きなヘッドを組み合わせると脚部の剛性が気になるので、小型である程度の操作性のビデオヘッドの入手が課題です。
まとめ
4段伸縮の脚で、最も細い脚部は頼りなく見えますが、剛性は十分なように感じます。扁平した独特な脚部品の断面形状が三脚の捻り方向に強い形状なのかもしれません。
脚を最大まで伸ばした時の設置高は150cmくらいまで伸び、カメラを取り付けた際のレンズの位置はほぼ目線の高さを確保できるので、通常の使用では十分な高さがあります。
動画の撮影用に1本だけを選ぶような場合に選択する三脚ではありませんが、小型なサブ三脚として便利だと思います。
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