Sachtler panorama 7+7

 年代物の三脚ヘッドで、Sachtler(ザハトラー)のpanorama 7+7という機材の話です。現行商品ではないので骨董自慢のような話になり恐縮ですが、中古品を見つけた際の参考などにご覧ください。
 このヘッドの発売時期などについて詳しくは知らないのですが、恐らく1980年代後半から90年代前半の製品で、16mmフィルムカメラを載せることを主な目的に設計された三脚ヘッドなのではと思います。

カウンターバランス

 カウンターバランスは1段で、あり・なしを選択できます。カメラの重心高によって適合カメラの重量が変わるのでなんとも言えませんが、3kgから8kg程度の重量を想定して作られているのではと思います。
 16mmフィルムカメラがちょうどそんな重量で、フィルムマガジンなしのカメラが3kg程度、400feetフィルムマガジンとズームレンズ、オンボードバッテリーを取り付けて10kg弱くらいだと思います。

写真 tr_photo_01
Sachtler panorama7+7ヘッド前面から

 カウンターバランス設定は1段のみなので、完全なバランスをとることはほぼ不可能です。カウンターバランス機能があることで、ティルト操作時のカメラ重量を少しでも軽減するといった程度の機能です。
 カウンターバランスのon、off切り替えはtr_photo_01中央の赤いツマミで操作します。ツマミが縦方向に向いた状態でヘッド正面から見て右側にスライドさせることで、カウンターバランス用のスプリングが解除され、ツマミを水平方向に回転させるとカウンターバランス解除の状態でロックされます。
 カウンタバランスをonにする場合は、ツマミを縦方向に回転させると任意の位置でカチッとツマミがスライドしてカウンタバランス用のスプリングに噛み合います。
 ユニークな機能として、カウンターバランスを設定する角度を切り替えることができます。前側に45度程度傾いた状態から後ろ側に45度傾いた状態まで、約15度程度の間隔でカウンターバランスの角度を設定することができます。後ろが重いカメラの場合はヘッドをやや前側に倒した状態をニュートラルな状態に、逆に前が重いカメラの場合はヘッドをやや後ろに倒した状態をニュートラルな状態に設定することで、カメラ重心の違いを調整することができます。こういった機構も、フィルムマガジンを取り付けて後ろが重い状態、ズームレンズを取り付けて前が重い状態と、重心が変化するフィルムカメラの運用にピッタリです。
 このカウンターバランスの設定角度を調節する機構がある代わりに、カメラの取り付け位置を前後にスライドさせることで重心を調整する機構はありません。カメラプレートを固定する部分が前後にスライドするような機構はなく、カメラプレート自体も決まった位置にしか取り付けることはできません。

トルク調整

 panorama 7+7という名称の由来と思われるのがトルク調整の切り替え段数で、パン・ティルト共に7段+フリーの切り替えができます。この切り替え段数は、現在のザハトラー雲台の中級機以上に搭載されている調整数なので特徴的というわけではありませんが、カウンターバランス調整が1段なのに対してトルク切り替えは現行品同等と、十分に現役で使えるスペックです。
 写真のヘッドはかなり使い込まれたもので、トルクの段数を示すシールが無くなっていたので適当なシールに数字を書いたものを貼って使っています。

写真 tr_photo_02
Sachtler panorama7+7ヘッド背面から

ボールヘッド径

 水平をとるためのボールヘッドの直径は100mmです。たまたまヘッドのみ入手する機会があり、脚は平和リーベックの3段脚を使っています。ただし、同じ100mmといっても各メーカーの脚とヘッド同士で互換性はなく、写真の組み合わせで使用するためにはSachtlerのボールヘッド固定用のネジと皿を平和リーベックのものに交換する必要があります。つまり、tr_photo_03でボールへッドを固定している皿とネジはリーベックヘッドのパーツです。交換といっても、ネジの太さ、ピッチは同一だったので、単にパーツを付け替えただけです。

写真 tr_photo_03
リーベックの三脚との組み合わせ

 ちなみに写真の脚には「FUJIX」というブランド名が記載されています。これは以前フジが業務用のビデオ三脚を販売した際に購入したものですが、平和リーベックのOEM製品です。品物自体は同時期のリーベック製品と全く同じものです。カーボン脚がまだ高価な時期の製品で、アルミ脚にカーボンコーティングを施すといった加工がされた、過渡期的な品物です。

使い所

 かなり古い機材ですが、カウンターバランス機構やトルク機構に不具合はなく、恐らく販売当時の性能を保っていると思われます。ドイツ製というか、西ドイツ製品の精密さ、堅牢さを感じる品物です。カウンターバランスの調整幅がほぼないヘッドではありますが、ミラーレスカメラにちょっとした重さのズームレンズ、5インチ程度の液晶モニタとそれを取り付けるためのリグパーツなどを組み付けるとそこそこの重さになり、トルクを少し強めに設定すればなんとなくバランスが取れた状態で使うこともできます。また、載せるカメラが軽すぎてカウンターバランスが不要な場合も、トルクの調整段数が多いのでトルクを強めに設定することで、カメラの重さをそれほど気にすることなく三脚を振ることができます。
 APS-Cセンサーで100mmから200mm程度の望遠で撮影するような場面では、小型の三脚よりも、この程度のサイズ・重量のある三脚の方が安定し、何よりも7段のトルク調整が望遠レンズでの撮影の助けになります
 7段トルク調整というスペックは、現在のザハトラー製品のFSB8に搭載されているので、カウンターバランス調整が細かくできるFSB8の方が遥に使い勝手は良いのでしょうが、100mmボールの方が水平出しが正確にできるように感じます。また、パンやティルトもヘッドのサイズが大きい方が、つまり回転部分の直径が大きい方が滑らかに感じます。しっかりとした精度で工作された機材であれば回転部分の直径の差がそれほど操作感の滑らかさに影響するとは思えないのですが、大きいヘッドほど滑らかに感じるので不思議です。

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