ソニー製APS-C用Eマウント
ワイドズームレンズ
E PZ 10-20mm F4 G

 2022年発売のAPS-C用ワイドズームレンズです。このレンズが発売された後、しばらくはE 10-18mm F4 OSSと併売されていたのですが、2023年に10-18mmの方が商品ラインナップから姿を消して、SONY製の10mmからのワイドズームレンズはこれだけになりました。
 型番に「OSS」の文字がなく、レンズ本体に手ブレ補正機能を内蔵していません。かなりワイドなレンズなので、スチル写真での利用であれば手ブレ補正機能はなくとも問題ないと思います。動画撮影の場合は、手持ちでの移動撮影などを考えると手ブレ補正機能が欲しいところですが、カメラボディの手ブレ補正を利用するしかありません。そういった点でスチル向けを想定した商品のように感じますが、型番のPZが示すようにパワーズーム内蔵で、動画用途を意識した製品のようにもみえます。

写真 L04_photo_01 レンズ前面側からとマウント側から

外観

 35mm判換算で15-30mmの超広角ズームレンズになりますが、APS-C用と対応するイメージセンサーが小さいこともあってか、とてもコンパクトです。(最近は各社ワイドレンズのラインナップが多く、フルサイズで15mmの広角レンズに「超」を付けるべきか悩むところです。)35mmフルサイズでこの画角のワイドレンズは大きな前玉を持つものが多いのですが、センサーサイズが一回り小さいAPS-C用ならではのコンパクトさで、通常のフィルタが使えます。フィルター径は62mmです。開放F値がF4と、あまり攻めていない仕様なのもコンパクトなことに貢献しているのだと思います。
 FX30に取り付けると、見た目のバランスがとても良く、ザ・カメラといったレンズとボディのバランスになります。見た目の良さは持ったとき、構えたときのバランスの良さにつながり、手ブレの減少などに貢献します。
 フォーカスやズーム機構はレンズ全長が変化しないインナーフォーカス、インナーズームで、電動ジンバルにのせる場合などにも重心の移動が少なく便利だと思います。

写真 L04_photo_02 FX30に取り付けたところ

 レンズ本体は梨地仕上げされた外装で、鏡胴部分は恐らくプラスチック製だと思います。レンズ前部に2つのリングがあり、前側がフォーカスリング、レンズ中央側がズームリングです。フォーカス・ズームリングはどちらも機械的にレンズ機構に噛み合ったものではなく、電気的に制御信号を入力するスイッチとしてのリングです。ズームリングに比べてフォーカスリングは僅かに重く感じます。硬いというほどではなく、ズームリングと比べると感触が異なるという程度の違いです。
 ズーム・フォーカスリング共にマニュアルレンズのような粘り感があり、E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSSのような安価なレンズに比べて、操作性に工夫が感じられます。他社のレンズでもAFレンズのフォーカスリングにこういった粘り感を持たせたものがあり、このレンズ独自の工夫というわけではありませんが、操作リングを使った僅かなフォーカスやズームの調整がしやすく便利です。
 ズームリングよりもフォーカスリングの外径を少し大きくすることで、それぞれのリングを個別に操作しやすいようにデザインされていますが、実際に使ってみるとフォーカス操作中にズームリングに触ってしまうことがあります。カメラの「ピント拡大」機能を使ってフォーカス操作しているときに、知らず知らずのうちにズームリングに触ってしまうようで、不意に拡大表示が解除されてしまうことがあります。操作性としては、フォーカスリングとズームリングの間に少し隙間を設けるか、フォーカスリングとズームリングの段差をもう少し大きくするか、あるいはそれぞれのリングをもう少し幅広にして欲しかったところです。

写真 L04_photo_03 写真右側の「E-mount」と印字された隣にある白いマークがレンズ取り付け指標

 レンズ側面にはズームレバー、フォーカスロックボタン、AF/MF切り替えスイッチがあります。写真 L04_photo_03の、レンズのマウント側(写真の右側)にある白いレンズ取り付け指標が真横、レンズ正面から見て3時の位置です。ズームレバーがほぼ真横に位置して、その下にフォーカスロックボタン、AF/MF切り替えスイッチがあります。
 ズームレバーは操作しやすい位置なのですが、AF/MF切り替えスイッチはレンズの下側に位置して操作しづらく感じます。全体にもう少し上側に配置するか、ズームレバーの上にフォーカスロック、下にAF/MF切り替えスイッチでも良いように感じます。私は、AF/MF切り替えをカメラのファンクションキーに割り当てているので、レンズ側の切り替えスイッチが多少使いづらくても良いのですが、ほぼ下側にある切り替えスイッチというのはデザイン的にあまり上手い配置とはいえません。
 レンズの付属品として、バイヨネット式の花形フードが付属します。

写真 L04_photo_04 付属のフードを取り付けたところ

描写

 このレンズは購入してから1ヶ月程度しか使用していないのですが、全体的に良く写る印象です。ワイド端でも画面の周辺で画像が流れることなく、ズーム全域で開放から良く写ります。
 動画 L03_movie_01はE PZ 18-200mm F3.5-6.3 OSSや、E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSSを紹介した投稿と同じようなアングルで撮影したものです。この映像は、カメラ側のレンズ補正機能を「オート」にした状態で撮影しています。レンズテストという意味では、全ての補正設定をoffにするべきかもしれませんが、実際に撮影するときと同じ状態で試した方が写り具合を判断できると思い、補正機能を使ってテストしています。カメラごとにレンズ補正機能に差があるのかはよく知りません。場合によっては、FX30と組み合わせるとこの程度は写る、と考えて頂いた方が良いかもしれません。

動画 L03_movie_01

 左上にカット番号を付けてあり、カット1・カット5は他のレンズと同じ立ち位置から同じ方に向いて撮影したものです。画角の違いも参考にしてください。
 E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSSのフレアがかなり盛大だったので、似たような光源の条件で撮影したのがカット8です。若干のフレアがみられるものの、E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSSのように派手にフレアが出ることはないようです。
 何度かスナップをしてみた印象としては、私が持っているEマウントレンズの中では、条件によってややソフトに写る印象があります。カット5の屋根の部分のように、画面の中で高輝度な部分が僅かにフワッとしたような写りをするように感じるのですが、他のレンズと撮り比べてみると大きな差異がなく、FX30のピクチャープロファイル設定との組み合わせの関係でそう感じるだけなのかもしれません。

ズーム

 PZ型番が示すとおり、パワーズームが内蔵されています。とても滑らかな動作で、レンズ本体のズームレバーのスライド具合でスピードが変化します。ズームスピードはメーカーの商品ページによると、無段階に変則可能とのことです。
 動画 L03_movie_03は、レンズ本体のズームレバーを操作して撮影した映像です。レバーのスライド具合でスピードを変えて、ゆっくり、中くらい、はやく、の3種類の速度でズームをしました。

動画 L03_movie_02

 ズーム時のモーター音もほとんどなく、ズーム画像も滑らかで品質の高いパワーズーム機構だと思います。ただし、FX30と組み合わせてXLRハンドルを取り付けて撮影すると、ハンドルに取り付けたガンマイクでズームのモーター音を拾ってしまいます。低速ズームのときは殆ど気にならないのですが、中速から高速でズームするとやや気になる音量です。ズームレバーでの操作ではなく、ズームリングを使ってもズーム駆動自体はモーターを使用するので、やはり中速から高速でズームをするとモーター音が気になります。
 ある程度賑やかな環境での撮影ならば、モーター音が気になる音量で録音されることはないと思いますが、静かな室内での撮影などでは場合によって目立つだろうと思います。モーター音の質が違うので比較対象として相応しいか微妙ですが、音量としてはE PZ 18-200mm F3.5-6.3 OSSくらいのノイズレベルで録音されます。
 XLRハンドルに耳を近づけるとズームモーターの音がするので、レンズマウント、ボディ筐体を通して振動が伝達されてしまっているようです。カメラ本体のマイクでは、ズーム時のモーター音を拾うことはありません。カメラ本体のマイクは、カメラボディのタッチノイズなどを拾わないように、恐らくマイクを上手く浮かせているのだと思います。それに対して、XLRハンドルのガンマイクの取り付け部分は、マイクへの防振対策が甘く、ハンドルの振動がマイクに伝わってしまっているようです。XLRハンドルの防振対策が甘いということも言えますが、他の、例えばE PZ 18-105mm F4 G OSSではこのようなことはありません。レンズ側の設計にもモーター音がカメラボディに伝わってしまう原因があるようです。
 このレンズとXLRハンドルを組み合わせての静かな場所での撮影では、電動ズームを使わないようにした方が良さそうです。レンズ本体からはほとんどモーター音がしないだけに少々残念です。
 ただし、XLRハンドルに装着するガンマイクによって、ズームモーター音の拾い方に多少の差があるかもしれません。私が使用しているのは、audio-technica製の少し古いショートタイプのガンマイク、AT4073aなのですが、ガンマイクの感度やタッチノイズへの対策の差でモーター音の拾い方に違いがあるかもしれません。

手ブレ補正

 このレンズには手ブレ補正機能はありませんが、この画角の広角レンズで手持ち撮影をした場合に、カメラ本体の手ブレ補正機能でどの程度安定するか見てみます。動画 L03_movie_04は、他のレンズテストと同じ場所から撮影しています。画角の違いも参考にしてください。

動画 L03_movie_03

 FX30と組み合わせる限りでは、レンズ本体に手ブレ補正機能が搭載されていないことは、全く気になりません。カメラ本体の手ブレ補正機能を使用すれば、十分に手ブレを抑えることができるように感じます。
 動画 L03_movie_05は、アクティブ手ブレ補正をONにして歩き撮りしたものです。ズーム全域が広角なので、10mm、12mm、14mm、16mm、18mm、20mmと2mm刻みで歩き撮りを試してみました。

動画 L03_movie_04

 FX30の手ブレ補正と相性が良いのか、これまでテストしたE Z 18-200mm F3.5-6.3 OSS、E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSSよりも手ブレ補正の効果が高いように感じます。それでも18mmくらいから補正が追いつかず、カクンとなる箇所がみられます。
 他社のカメラ、例えば私が所有しているカメラだとNikonのZ6は、広角レンズとカメラボディの手ブレ補正機能との相性が悪く、俗にいうコンニャク現象が出るのですが、FX30のカメラ内手ぶれ補正は広角でもそういった歪みをほとんど感じさせずに手ブレを補正してくれます。10mmで遠景の空や正面のビルに若干「コンニャクっぽい?」と思わせる歪みがありますが、広角レンズ独特の歪みのようにも見え、ほぼ気になりません。

全体的にみて

 カメラ本体の超解像ズーム機能を併用すると、10mmから30mm(35mm判換算で15mmから45mm)と超広角から標準レンズ域までカバーします。XLRハンドルを併用したときにズームのモーター音を拾ってしまうのが気になるところですが、ハンドルなしで、カメラ本体のマイクを使うのであれば、ズームモーターは無音と言って良い静かさです。ワイド端の画角は、アクティブ手ブレ補正を入れても迫力のある広い画角で、広角系の常用レンズとしても魅力的です。
 高額になりがちな広角ズームレンズですが、ズーム倍率2倍、開放でF4とスペック的に欲張らず、小型軽量であることと、広角10mmからの画角という部分にポイントを絞ってコストを抑えたレンズだと思います。価格はオープン価格で、SONYストアだと99,000円とそれなりなお値段ですが、超広角域をカバーするズームレンズとしては適当な価格だと思います。SONYのAPS-C用のズームレンズで16mm未満の焦点距離をカバーするのはこのレンズだけなので、広い画角が必要ならば揃えておきたいレンズです。

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