ソニー製APS-C用Eマウント
コンパクトズームレンズ
E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS

 約3倍のズーム倍率をもった、SONY製のコンパクトなズームレンズです。APS-C用のEマウントレンズで、一部のミラーレスカメラに同梱されるキットレンズにもなっています。定価は税込で44,000円ですが、家電量販店で3万円台前半の価格で販売されており、最安値を調べると3万円程度で販売されているケースもあります。安価でコンパクトなことが魅力なレンズです。

写真 L02_photo_01 レンズ収納時

外観

 カメラの電源を入れるとレンズ鏡胴が伸長し、収納時はレンズ鏡胴が沈み込んでコンパクトなサイズになる「沈胴式」と呼ばれるタイプのレンズです。

写真 L02_photo_02 撮影時、レンズが伸長した状態

 レンズ鏡胴は、アルミニウムにアルマイト処理をしたような黒いツヤのある仕上げで、価格のわりに高級感があります。レンズマウントも、安価なレンズにありがちなプラスチックマウントではなく、金属製のマウントです。

写真 L02_photo_03

 レンズ前部にズーム・フォーカス操作兼用のリングが一つ装備されています。オートフォーカス時はズームリングとして、マニュアルフォーカス時はフォーカスリングとして機能します。機能が切り替え式なので当然なのですが、機械的にレンズ機構と連結したリングではなく、フォーカス、ズームの制御信号を入力するためのリングです。
 レンズ後方から見て左側に電動ズームの操作レバーが装備されています。

写真 L02_photo_04

 フィルター径は、40.5mmと小さく、レンズ本体よりもかなり内側にフィルターネジが切られています。レンズの前玉はフィルター径よりも更に小さく24mm程度と小ぶりで、小さなゴミが付着しただけでも画面上では大きく目立ちます。どのレンズでも、ゴミの付着には気をつけた方が良いのですが、このレンズは特に気をつけた方が良いかもしれません。

写真 L02_photo_05

コンパクトさが最大の特徴

 FX30に取り付けてレンズを収納状態にすると、ほぼグリップの飛び出しと同じ程度の大きさです。カメラをカバンに収納するにも収まりが良く、ストラップをつけて肩からかけても、レンズの重みでお辞儀をしたように傾くことがありません。ロケハンや、資料写真の撮影などに持ち出すのにとても便利です。

写真 L02_photo_06 FX30に取り付けた状態

F通しのように使える

 それほど多くのメーカーのカメラを使ったことはないのですが、SONYのレンズとボディの組み合わせでは、F値が一定でないズームレンズも、数字の大きい方の開放F値以上で使えば、撮影中にズームをしても明るさが変わることがありません。このレンズの場合、F5.6以上に絞って使っている限り、ズーム中に明るさが変化することはありません。
 Nikon Z6の場合は、F値が一定でないズームレンズでズーム操作をすると、明るさを一定に保ように絞りの口径が調整されるのですが、調整が段階的なために明るさも段階的に変化します。
 BlackmagicdesignのBlackmagic Pocket Cinema Camera 4kの場合は、明るさを一定に保つなどの機能はなく、F値の変動とともに明るさも変化します。これらのカメラの場合は、F通しと呼ばれる、ズーム全域でF値が一定のレンズを選択せざるを得ません。
 その点、SONYの場合は、F値が一定ではないズームレンズでも、数字の大きい方の開放F値以上で使えばズーム全域で明るさが変化することなく撮影できるので、動画撮影用のレンズの選択肢が多くなります。ここら辺は、コンパクトなハンディカムカメラを長く作ってきた経験が生かされているのかもしれません。

描写

 半年ほど各種スナップに使用してみて、値段のわりに良く写るといった印象です。条件によっては、ややコントラストが低く写る傾向があるように感じますが、広角端や望遠端で解像力が落ちるとか、絞りを開放にすると極端に解像力が落ちるといったことはありません。ただし、望遠側でも50mmと焦点距離が短く、開放F値も比較的大きな値なので、背景を大きくボカすような映像は期待できません。それでも、望遠側での撮影や、近接撮影で多少ボケを作り出すことはできます。
 動画 L02_movie_01では、アクティブ手ブレ補正をonにした状態で、手持ち撮影した映像です。手ブレ補正の効き具合も参考にして下さい。画面の左上にカット番号を記載しました。カット3は広角端で絞りを開放にして撮影していますが、周辺まで比較的よく写っています。
 なお、カメラ側のレンズ補正機能は、「オート」にした状態で撮影しています。レンズテストという意味では、全ての補正設定をoffにするべきかもしれませんが、実際に撮影するときと同じ状態で試した方が写り具合を判断できると思い、カメラの補正機能を有効にして撮影しています。カメラごとにレンズ補正機能に差があるのかはよく知りません。場合によっては、FX30と組み合わせるとこの程度は写る、と考えて頂いた方が良いかもしれません。

動画 L02_movie_01

 カット1、カット5は、E PZ 18-200mm F3.5-6.3 OSSをご紹介した投稿で撮影したのと同じ場所から撮影しています。画角の違いも参考にしてください。カット7やカット9でややコントラストの低下が感じられます。特にカット9では、僅かにフレアが入っています。

逆光フレア

 どんなレンズでも、逆光などの条件で多少のフレアは起こります。しかし、このレンズは特定の角度から強い光が入ったときに、盛大にフレアが起こります。逆光といっても、画面内に光源が写るような完全な逆光で大きなフレアが出ることはありません。画面内に太陽が写り込むような場合には起こらないので、絶妙な角度で強い光がレンズに差し込んだときに、内部で乱反射を起こすのだと思います。
 動画 L02_movie_02では、フレアが目立つ状態で撮影をしています。掌で遮光して、フレアのアリ、ナシの状態を比較しています。

動画 L02_movie_02

 ペンライトでレンズを照らしながらフレアの入り具合を試して見ると、画面の僅かに外側に光源があって、レンズ内部までを照らす角度で入射したときに、最も派手にフレアが出るようです。それはフレアの出やすい光の入り方である、と言ってしまえばそうなんですが、私が持っている他のEマウントレンズでここまで派手にフレアが出ることはありません。このレンズは特にフレアが強く出ると言って良いと思います。
 焦点距離によってフレアの出やすい光の入射角度が変わるので、フードでは防ぎきれないと思います。頻繁にこういった現象に出くわすわけではないので、フレアが出たときに撮影位置を変えるとか、掌でカットするなどの工夫をすれば良いと思います。近くに日陰があれば、日陰に入ってレンズに光源からの光が直接あたらないようにするのも有効な方法です。また、乱暴な方法ではありますが、編集ソフトでコントラストを調整することで、フレアを目立たなくすることもできます。

ズーム

 型番のPZが示す通り、パワーズーム内蔵です。速度は比較的速めな設定で、レンズ本体での操作の場合、速度は1種類だけです。カメラ本体でズーム速度を数段階に設定でき、レンズ本体で操作するよりも速いスピードを設定できます。
 沈胴機構のためかズーム動作がガタつきます。映像の中でズーム効果を利用するには少々難ありな印象です。また、ワイド端のズーム動作時に、歪曲収差をデジタル補正するような歪みが見られます。本来は、スムーズに補正されて映像に歪みを感じさせないのが好ましいのですが、レンズの歪み具合とそれをデジタル補正する処理が上手く噛み合っていないようです。ズーム動作のガタが影響しているのかもしれません。
 動画 L02_movie_03はレンズ本体でズーム・イン、ズーム・アウトをした映像です。

動画 L02_movie_03

 FX30に取り付けてカメラ本体のズームレバーを使うと、ズームレバーのスライド具合でズームスピードを2段階に切り替えることができます。この2段階のズームスピードにはそれぞれ、8段階のスピードから好みのスピードを設定することができます。動画 L02_movie_04はカメラ本体で設定できるズームスピードから、一番遅い1、そして3、5、一番早い8でズーム・イン、ズーム・アウトをした映像です。

動画 L02_movie_04

 ズーム時のモーター音はやや気になる音量です。カメラ側から高速に設定すると結構な音量になります。動画 L02_movie_04で、1と3のスピードでは電車の音が大きくてズームのモーター音は分かりませんが、5と8のスピードでははっきりと録音されています。このレンズのパワーズームは映像表現としてズームを使うというよりは、画角を決める際に利用するのが主な用途になるように思います。

手ブレ補正

 レンズ型番の末尾に「OSS」とあるように、手ブレ補正機能も搭載されています。特段によくブレを吸収するということはなく、普通の効き具合といった印象です。E PZ 18-200mm F3.5-6.3 OSSの手ぶれ補正の方が強力に感じます。なお、E PZ 18-200mm F3.5-6.3 OSSのテストと同じ場所から撮影しています。画角の違いや、手ブレ補正の効き具合を比較してみてください。
 動画 L02_movie_05は、16mm、30mm、50mmで、手ブレ補正なし、スタンダード手ブレ補正、アクティブ手ブレ補正を手持ち撮影で試した動画です。

動画 L02_movie_05

 動画 L02_movie_06は、アクティブ手ブレ補正をONにして、16mm広角で歩き撮りしたものです。歩き撮りの上手い下手は人それぞれだと思いますが、個人的には16mmがある程度安定して歩き撮りできるギリギリの焦点距離かな、と思います。

動画 L02_movie_06

フード

 前記のフレアを防ぐ目的でフードを利用するのは難しいかと思いますが、レンズ本体の前面を保護する目的で適当なフードを付けておくと安心です。しかし、専用のフードは用意されていません。広角側が、35mm判換算で24mmとワイドな仕様なので、あまり長いフードはケラレてしまう心配があります。通販サイトで適当なものを購入してみました。

写真 L02_photo_07

 先端にいくほど内側にすぼまったデザインで部分的に肉抜きされた形状のフードは、一部のレンズで使われており、使い勝手に興味がありました。私が購入したものはかなり短いので、フレアなどをカットする効果は殆ど期待できませんが、なんとなく格好いいですよね。
 フィルタ取り付けネジを使って装着するフードは、フードの内側にフィルタ取り付けネジが切ってあるものを選ぶのがおすすめです。ここにネジが切ってないと、レンズキャップがすぐに外れてしまいます。

写真 L02_photo_08

全体的にみて

 小型であることも性能の一つです。小型化と低価格化のためにズームの滑らかさや明るさなどの点を犠牲にしていますが、総合的にはコストパフォーマンスの良いレンズだと思います。ただ、カメラボディの補正能力によって描写に差が出るのかは気になるところです。FX30と組み合わせる限りでは、比較的良好な描写だと思います。カメラ本体の超解像ズーム機能を併用すると、16mmから75mm(35mm判換算で24mmから112.5mm相当)と約4.7倍ズームとして使用でき、手持ち撮影で手軽に日常的なスナップを撮影するには必要十分な性能があると感じています。

購入について

 通販サイトで、相場価格よりも2割ほど安いものを買ったら、保証書も説明書も同梱されていませんでした。箱も簡素な白い箱で、「新品」とだけ印字したものでした。わざわざ「新品」と印字した箱って怪しいですよね。恐らく正規品ではなく、カメラボディとセットのキット販売用に出荷されたものをバラしたものか、新古品(開封しただけのような、ほぼ新品扱いの中古品)ではないかと思います。
 説明書はネットでダウンロードできるし、保証については、1年間自然故障しなければ問題ないと考えそのまま使っているのですが、ちょっと気になります。通販サイトでの購入の場合、出荷業者が信頼できるところか、大手量販店のサイトを利用した方が安心かな、と思いました。

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