内部にトランジションを伴った複合クリップ解除時の不具合

 ここのところFinal Cut Pro(ファイナルカットプロ 以下FCP)での編集時に複合クリップを多用していて、いくつかの不具合を感じました。今回はそんな不具合のうち、複合クリップ内のタイムラインにトランジションを伴ったクリップを配置している場合の、複合クリップ解除時の不具合について記載します。

トランジションを伴った複合クリップを解除した場合 1
両端にトランジションあり

 「複合クリップの活用」で記載したような、基本ストーリーラインに配置したクリップの上に並べたクリップ、つまり接続したクリップ群にトランジションを適用したものを複合クリップ化→複合クリップを解除するといったケースです。このクリップ群は、3秒の継続時間のクリップ4つの全ての端に1秒のディゾルブ処理をかけたものです(68_fig_01)。タイムラインは23.98fps設定です。

FCP画面 68_fig_01
複合クリップ作成前

 このクリップ群を複合クリップに変換します(68_fig_02)。

FCP画面 68_fig_02
複合クリップ作成後

 複合クリップ作成までの工程では問題ありませんが、この複合クリップを解除すると最後のクリップだけ継続時間が長くなっています(68_fig_03)。比較画像はタイムスケールが同じになるようトリミングしているので、見た目で長さが変化しているクリップは実際に継続時間が変化しています

FCP画面 68_fig_03
複合クリップ解除後

 68_fig_04の4つのクリップの継続時間を調べてみると、前3つのクリップは3秒の継続時間のままですが、最後のクリップだけ3秒12フレームと継続時間が0.5秒長くなっています。試しに最後のクリップだけ長くなってしまったクリップ群を改めて複合クリップにしそれを解除すると、最後のクリップは更に0.5秒伸びて4秒の継続時間になっていました。
 複合クリップ内のクリップ群の末尾にトランジションを適用した場合、複合クリップの解除時にクリップの継続時間が伸びるようです伸びる時間は、適用したトランジションの継続時間の半分だけ伸びるようです。

トランジションを伴った複合クリップを解除した場合 2
両端にトランジションなし

 今度は、クリップ群の両端のディゾルブを取り除いて同じ処理をしてみました(68_fig_04、68_fig_05、68_fig_06)。

FCP画面 68_fig_04
複合クリップ作成前
FCP画面 68_fig_05
複合クリップ作成後
FCP画面 68_fig_06
複合クリップ解除後

 今度は、4つのクリップに継続時間の変化はありません。複合クリップ内のクリップ群の末尾にトランジションを適用していない場合、複合クリップの解除時に継続時間の変化はないようです。

トランジションを伴った複合クリップを解除した場合 3
片端にトランジションあり 1

 クリップの数を2つに減らした場合はどうでしょうか。2つ連続で並べたクリップの片端だけにディゾルブを適用した場合を試しました。ここまで複合クリップに変換した際の不具合はないので、複合クリップ作成時の画像は省略して複合クリップ作成前と複合クリップ解除後の画像を比較します。
 前側のクリップの開始部分のみにディゾルブを適用してみます(68_fig_07)。

FCP画面 68_fig_07
複合クリップ作成前

 このケースの場合、68_fig_08の警告が表示され、「分割」をクリックするとディゾルブ処理が削除された状態で複合クリップが解除されました(68_fig_09)。

FCP画面 68_fig_08
複合クリップ解除時のアラート画面

 また、ディゾルブを適用していた前側のクリップの継続時間にも変化があり、68_fig_07で前側のクリップの開始位置は15秒ですが、68_fig_09では15.5秒から開始しています。解除後には、ディゾルブを適用していた前側のクリップのみ継続時間が0.5秒短くなっています

FCP画面 68_fig_09
複合クリップ解除後

 後ろ側のクリップの終了部分にディゾルブを適用した場合はどうでしょうか(68_fig_10)。

FCP画面 68_fig_10
複合クリップ作成前
FCP画面 68_fig_11
複合クリップ解除後

 この場合も68_fig_08の警告が表示され、「分割」をクリックするとディゾルブ処理が削除された状態で複合クリップが解除されました(68_fig_11)。このケースの場合、クリップの継続時間に変化はありませんでした。
 2つのクリップの片側だけにディゾルブを適用した場合は、「トランジションを伴った複合クリップを解除した場合 1」「トランジションを伴った複合クリップを解除した場合 2」と比べて継続時間の変化に違いがあります。複合クリップ作成時のクリップの状態の違いが、この変化の違いに関連していると思われます。考えられる状態の違いとして、「トランジションを伴った複合クリップを解除した場合 1」「トランジションを伴った複合クリップを解除した場合 2」に比べて、クリップ群全てがストーリーラインにまとめられているか、クリップ群の一部だけがストーリーラインにまとめられているか、といった違いが考えられます。

トランジションを伴った複合クリップを解除した場合 4
片端にトランジションあり 2

 今度は、2つのクリップをストーリーラインにまとめた上で、ストーリーラインの開始部分のみにディゾルブを適用した場合(68_fig_12、68_fig_13)、終了部分のみにディゾルブを適用した場合(68_fig_14、68_fig_15)を試してみます。

FCP画面 68_fig_12
複合クリップ作成前
FCP画面 68_fig_13
複合クリップ解除後
FCP画面 68_fig_14
複合クリップ作成前
FCP画面 68_fig_15
複合クリップ解除後

 2つのクリップをストーリーラインにまとめた場合、開始部分のみにディゾルブを適用したケース(68_fig_12、68_fig_13)では変化はなく、終了部分のみにディゾルブを適用したケース(68_fig_14、68_fig_15)後半のクリップの継続時間が0.5秒伸びています。これは、「トランジションを伴った複合クリップを解除した場合 1」の結果とほぼ同じです。
 では、1つのクリップではどうでしょうか。クリップの開始部分にディゾルブを適用した場合(68_fig_16、68_fig_17)と、クリップの終了部分にディゾルブを適用した場合(68_fig_18、68_fig_19)を試してみました。

FCP画面 68_fig_16
複合クリップ作成前
FCP画面 68_fig_17
複合クリップ解除後
FCP画面 68_fig_18
複合クリップ作成前
FCP画面 68_fig_19
複合クリップ解除後

 クリップが一つだけの場合も、ストーリーラインにしたクリップの開始部分では変化はなく、終了部分で継続時間が伸びています。
 このことから考えられるのは、複合クリップ内でストーリーラインにまとめた一つ以上のクリップの末尾にトランジションを適用した状態のとき、その複合クリップを解除すると末尾にトランジションを適用されたクリップの継続時間がトランジションの継続時間の半分だけ伸びる、といったルールです。先頭のクリップの継続時間が短くなるケースについては、事項でテストします。

複合クリップ解除時にトランジションが削除されるケース

 前項で68_fig_08のアラート画面が表示される場合があると記載しました。このアラート画面が表示される条件についてテストしてみた結果が以下です。3つのクリップを基本ストーリーラインの上に配置し、トランジションの適用箇所を変えながら6パターンで試しました

再掲FCP画面 68_fig_08
複合クリップ解除時のアラート画面

 以下の68_fig_20、68_fig_21のクリップとトランジションの配置で複合クリップ化してそれを解除したとき、アラート画面が表示され複合クリップ解除後のクリップからはトランジションが削除されていました。ただし、解除後のクリップの継続時間に変化はありませんでした。トランジションが消えているだけなので、複合クリップ解除後の画像は省略しています。

FCP画面 68_fig_20
3個のクリップ群の末尾のみにトランジションを適用
FCP画面 68_fig_21
3個のクリップ群の最後のクリップの両端にトランジションを適用

 以下の68_fig_22、68_fig_23のクリップとトランジションの配置で複合クリップ化してそれを解除したとき、アラート画面が表示され複合クリップ解除後のクリップからはトランジションが削除されていました。さらに、解除後は先頭のクリップの継続時間が0.5秒(トランジション継続時間の半分)短くなっていました。複合クリップ解除後の画像は省略しています。

FCP画面 68_fig_22
3個のクリップ群の先頭のみにトランジションを適用
FCP画面 68_fig_23
3個のクリップ群の最初のクリップの両端にトランジションを適用

 68_fig_24のクリップとトランジションの配置で複合クリップ化してそれを解除したとき、アラート画面は表示されず、複合クリップ解除後にトランジションが削除されることもありませんでした。また、解除後のクリップの継続時間に変化はありませんでした。この配置は、「トランジションを伴った複合クリップを解除した場合 2」で試した68_fig_06と同様の配置ルールにあたり、結果も同様に変化なしとなっています。複合クリップ解除後の画像は省略していますが、解除後の状態は68_fig_24と同様です。

FCP画面 68_fig_24
3個のクリップ群の接続部分にトランジションを適用

 68_fig_25のクリップとトランジションの配置で複合クリップ化してそれを解除したとき、アラート画面は表示されず、複合クリップ解除後にトランジションが削除されることもありませんでした。ただし、解除後のクリップは、末尾のクリップのみ継続時間が0.5秒(トランジションの継続時間の半分)伸びていました。この配置は、「トランジションを伴った複合クリップを解除した場合 1」で試した68_fig_01と同様の配置ルールにあたり、同じように末尾のクリップの継続時間に変化があったのだと思います。複合クリップ解除後の画像は省略しています。

FCP画面 68_fig_25
3個のクリップ全ての両端にトランジションを適用

 以上の6ケースを比べてみると、複合クリップの解除時にアラートが表示される条件として複合クリップ内のタイムラインで

  • 基本ストーリーライン以外に配置されている(接続されたクリップである)
  • クリップ群の一部だけがストーリーライン化されている
  • クリップ群の一部だけにトランジションが適用されている

といった3つの条件があるように思われます。また、上記の条件を満たしつつ、尚且つクリップ群の先頭にトランジションがあるとき、複合クリップの解除と共にトランジションが削除され、さらに先頭のクリップのみ継続時間が短くなるといったことが起きるようです。

複合クリップのコピペでアラート表示?

 また、本来は複合クリップの解除時にアラートの表示されない68_fig_24の配置の場合でも、この複合クリップをコピーアンドペーストしたとき、複合クリップの解除時にアラートが出る場合があるようです。このケースは何度か試してみると、複合クリップ解除時にアラートが出ない場合もあり、複合クリップのコピペが必須条件なのかは判然としません。

まとめ

 複合クリップ内のクリップにトランジションを適用したとき、それが複合クリップ内の両端に位置する場合に複合クリップの解除操作で問題が起きるケースが見受けられます。また、ストーリーラインとしてまとめたクリップとそうでないクリップが混在したときも、解除時に問題が起きることがあるようです。なお、複合クリップの作成で問題が起きることはありません。
 今回の問題は、複合クリップの解除時に起きています。編集バージョンの異なるタイムラインを作る際に複合クリップの解除と再作成を行っていたのですが、「FCPで複合クリップの活用 複合クリップの利点と欠点」へのコメントで新しい親クリップを参照」というコマンドを教えて頂いたので、複合クリップを解除する機会は激減しました。それでも、「FCPで複合クリップの活用 複合クリップの利点と欠点」の「複合クリップ内のトランジション」の項で記載したような問題もあるので、複合クリップ内に配置したクリップ群の最初と最後の部分にトランジションを適用した場合は、細かな不具合を伴うことを踏まえておいた方が良さそうです。

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