BenQ PD2705U ディスプレイ

 MacBookのモニタだけでは作業エリアが狭く、自宅での作業時には外付けモニタを増設することでモニタスペースを追加しています。私はこれまで、外付けモニタとして安価な20インチ程のモニタを使ってきたのですが、このモニタを購入した頃はプログラミングにハマっていたためにコードを確認するだけならば色彩再現などは拘らなくて良いだろうと購入した製品で、映像の編集などで色彩確認をするには不向きなモニタでした。こういった程度のモニタとの組み合わせの場合、色補正の結果はMacBook本体のモニタで確認する必要があるなどの不便さがあり、昨年の夏にMacBook Proを買い替えたタイミングでモニタ環境も見直すことにしました。ここで悩みの種になるのが、Macと組み合わせて使うのに、色彩表現が近いものでないと作業がしづらいということです。

機種選び

 Mac用のモニタとして、AppleからはPro Display XDRとStudio Displayという2つの製品が展開されています。Apple製品ということもあり、MacBookとの色彩的なマッチングは比較的高いレベルが期待できます。しかし、これらの製品はなかなかに高価で、Pro Display XDRに対して普及版的な価格設定のStudio Displayでも、27インチディスプレイとしては高めの価格設定です。Appleのブランド料もあるのでしょうが、カメラやオーディオ機能にコストが掛かっているように見えます。
 コロナが流行っていた頃はそれなりにリモート会議もあったのですが、この1年くらいはそういった機会も殆どありません。また、MacBook本体にカメラが付いているので、そちらを使えばカメラは必要ありません。空間オーディオ機能も興味はあるのですが、映像編集時のオーディオモニタとしては使い慣れたモニタスピーカーを使用するので、ディスプレイに過度なオーディオ機能はなくても問題ありません。MacBookに外付けするためのモニタにこういったカメラやオーディオ機能にコストをかけるのは勿体なく感じたため、Apple製品以外のモニタである程度満足できるものがあるか探してみることにしました。

BenQ

 YouTubeでBenQというメーカーのモニタをレビューしているのをみたことがあり、ホームページを見てみました。正直なところ数年前までは、BenQというとAmazonなどで安価なプロジェクタやPCモニタを販売している海外メーカーという印象しかありませんでした。しかし、今回ホームページを見てみるとカラーマネジメントに対応した高価な製品までラインナップした本格的なモニターなどを製造・販売するメーカーでした。
 YouTuberへ積極的に働きかけているのか、YouTube上にはレビュー動画が多数あります。それらを視聴すると品質に期待できそうだったので、今回はBenQ製品の中から選ぶことにしました。サイズや解像度(ピクセル数)はAppleのStudio Displayを検討したことから27インチ、ピクセル数については4K製品を探しました

Mac用モニタ

 BenQの特徴的なところに、Mac用に色彩調整をしたモニタがあることが挙げられます。
 Macのモニタ画面はWindows PCに比べてやや黄色が強く表現されるように見えます。これは単に黄色が濃く表現されているというわけではなく、モニタで再現できる色の規格がそういった特性であるためなようです。ビデオで再現できる色の範囲として規定されたRec.709という規格に比べて、MacのモニタはP3というRec.709よりも黄色や緑色の再現に優れた規格に沿って設計・調整されているためです。
 BenQのモニタもこのP3規格の色再現に近づけたシリーズがあり、それらの製品をMac向けとしてラインナップしているようです。また、Mac向けとした製品は、この他にも接続端子にUSB-CやThunderbolt端子を採用するなどの工夫も施されているようです。(P3規格に基づいた色彩再現がされていればMacの画面と同様の色彩が再現されるのか、あるいはそれ以上の調整がなされているのかは、それほど多くのモニタを試したわけではないので分かりません。)
 なお、現在はBenQではMac向け用のモニタとしてMA270・MA320Uという少し価格を抑えたシリーズも展開されているようです。

PD2705U

 モニタの買い替えを検討したのは昨年(2024年)の7月で、当時Mac用を謳ったBenQ製モニタはPD2725Uという製品でした。しかし、BenQのホームページは若干見辛く、よくよく見てみるとより格下のPD2705UにもMac用のプリセット設定があります。PD2725Uは2025年1月現在、メーカーホームページでの価格は142,000円。一方のPD2705Uは90,000円です。しかも購入を検討した2024年7月にはPD2705Uに対して割引サービスがあり、BenQサイトで注文すれば税込59,800円でした。MacBook Proを購入したばかりで金欠気味だったこと、BenQ製品を購入するのは初めてなのでお試しの意味も含めて価格を抑えたPD2705Uを購入することに決めました。
 先ほど記載したP3規格の色彩再現については、PD2725Uは95%の再現と記載されているのに対して、PD2705UのページではP3の色彩再現について明記されていません。価格設定の面からみて、PD2705UはPD2725Uよりも色彩再現の性能面で劣るのではと思われますが、一応Mac用のプリセット設定があり、ある程度の色彩再現は期待できます

PD2705Uを使用してみて

昇降・回転

 モニタは手動で上下に10cmほど昇降し、90°回転させて縦位置で設置することもできます。また、左右に15°づつ、合計30°首を振ることができます
 事前に調べたレビュー類では、モニタを下げ切った位置でも、設置面から8cmほど浮いた位置までしか下がらないのが難点といった意見がいくつかありました。ただし、これについて私の設置環境では特に不便を感じません。昇降幅については設置環境によって異なるので、自分の使用環境で不便なく使えれば問題ありません。

写真 pc05_photo_01
ディスプレイ部分を最も下げた状態(机とディスプレイ下端との間には8cmほど隙間がある)
写真 pc05_photo_02
ディスプレイ部分を最も引き上げた状態(pc05_photo_01よりも10cmほど高くなる)

 画面の縦横の回転機能については、私は使っていません。ただし、デザイン作業などで縦位置のレイアウト作業を日常的に行う場合は、ありがたい機能だと思います。映像編集でも、デジタルサイネージ用に縦位置動画を編集する機会が多い場合などは重宝するかもしれません。

写真 pc05_photo_03
ディスプレイ部分を90°回転させて縦位置にした状態

端子類

 本体背面下部のカバーを外すと、各種のディスプレイ接続用のポートやUSBのアップストリーム・ダウンストリーム端子などがあります。PCのUSB端子と接続するのがアップストリーム端子で、これを接続することでダウンストリーム端子をPCのUSBポートのように、つまりモニタをUSBハブ代わりとして使うことができます。
 近年のディスプレイの接続端子としては十分な装備だと思います。
 中央にあるUSB miniポートは、後述するコントローラーの接続端子です。

写真 pc05_photo_04
ディスプレイ背面下部の端子ポート

 背面の端子ポートにはカバーを被せることができます。このカバーが大型なために歪みが生じるのか、付け外しに若干手間取ります。一度設置してしまえば滅多に開閉しないカバーなので大きな問題ではありませんが、外しづらく取り付けづらいため、配線を変える作業などは躊躇します。

写真 pc05_photo_05
ディスプレイ背面下部の端子ポートには、カバーをつけることができる

 側面には、USBのダウンストリーム用端子と3.5mmのオーディオ出力ポートがあります。背面ポートは日常的にアクセスするにはちょっと面倒ですが、側面にこういったポートがあるととても便利です。特にUSBポートは、MacBook本体のポートをディスプレイ接続で一つ使ってしまうので重宝します。
 ただし、ディスプレイとMacBook本体とをUSB-C端子で接続した状態だと、ディスプレイ側面のUSBダウンストリーム端子の転送速度は仕様書ほどの速度は出ないようです。Macに直接USB接続したSATA接続タイプのSSDは300MB/sほどの読み書きスピードが出ているのに対して、モニタ側面のポート経由で接続した場合は30MB/sほどでしか読み書きできませんでした。私の使っているMacとディスプレイとの相性の問題なのか、速度の出ない原因はよく分かりません。それでも「とりあえず繋がる」のは助かります。

写真 pc05_photo_06
ディスプレイ側面の端子ポート

オーディオ

 多くのレビューで言及されていますが、内蔵スピーカーの音質は一般的なPC用モニタにオマケで付いているスピーカー程度です。ただ、側面の3.5mmオーディオアウト出力の音は悪くありません。DA変換とアナログアンプはしっかりとしたものが使われているようです。私は現在のところ、この出力からモニタスピーカーに接続していますが、MacBook本体に接続した場合と大きな音質の差は感じません。(側面の3.5mm端子はヘッドホン出力なので、本来はモニタスピーカーのライン入力とはインピーダンスという抵抗値が異なるため不向きな接続方法ですが、後述するコントローラーでの音量調節が便利なので、この配線で使っています。)

色彩再現

 色彩の再現性は良く、満足できる製品です。Mac用と謳ったPD2725Uから1ランク下がる製品ですが、MacBook本体のディスプレイと比べてかなり近い色を再現しています。完全に同じというほどではありませんが、そこはP3規格の再現度の差なのだと思います。ちょっと気になるのは、ディスプレイでMacBookモードとRec.709モードを切り替えても殆ど色味が変わらないことです。Rec.709以上の色再現は、ほぼしていないということなのだと思います。それでも、ビデオ編集時にPD2705Uの画面で色補正をしたものをMac本体で確認して大きな差を感じない仕上がりになります。27インチサイズであれば、Final Cut Proのビューア画面を表示した上でビデオスコープを表示しても十分なサイズで確認でき、作業効率はだいぶ良くなりました。
 PD2725Uなど、もう少しグレードの高いモデルであればより近い再現になるのではと思うと、次の買い替えもBenQ製品で試したくなります。

明るさ

 BenQのホームページで、PD2725U(今回紹介しているモデルよりも1ランクグレードが上の製品)のページにはレビュー動画が多数掲載されていて、その中の一つに輝度がもう一歩という意見がありました。私の購入したPD2705Uも同程度の輝度性能なので購入前は若干気になっていたのですが、実際に使ってみると十分な輝度表現が可能なように感じます。輝度性能はモニタの昇降機能と同様に設置環境に左右される上に、次に記載するHDR映像の表示などにも関連して意見や好みの分かれるところなのかもしれません。

HDR

 HDRという、映像をより幅広い輝度差で表現する技術にも対応しています。ただし、私はHDR映像の制作を行なっていないため、これについては実用した感想はありません。メモ的に調べたスペックを記載しておきます。
 PD2705Uの最大輝度は最大400cd/m2で、購入を迷ったPD2725Uも同じ値です。AppleのStudio Displayについては、ホームページでの仕様の記載が600ニト(nt)と単位が異なります。調べてみると、1nt=1cd/m2と換算して差し支えないようなので、Studio Displayは600cd/m2と私が購入したBenQ製品の1.5倍ほど明るいようです。私は今回HDRを重視した機種選びをしなかったので、PD2705Uで差し支えない輝度性能ですが、HDR性能を重視するならば、PD2705Uは少し物足りない輝度性能かもしれません。

解像度

 ここでの「解像度」は、ディスプレイに表示するピクセルの細かさです。1インチ=約2.5cmの中に幾つのピクセルが表示できるかという尺度で、単位はppi(ピクセル・パー・インチ)で表します。以前はパソコンモニタといえば72ppiと相場が決まっていたのですが、スマートフォンのディスプレイの高解像度化に伴ってパソコンモニタも高解像度化しているようです。高解像度な方が表示画像のキメが細かく文字などが美しく表示されるといった利点がありますが、高価になります。
 今回購入したBenQのPD2705Uは163ppi。ちなみにM3のMacBook Pro16インチは254ppiAppleのStudio Displayは218ppiです。BenQのPD2705Uが27インチ画面に4K表示なのに対してAppleのStudio Displayは27インチで5K表示なので、その分ピクセルの密度が高く、解像度差がでてきます。
 以前読んだ記事で、携帯デバイスのように手に持って使う機器は300ppi、机に設置して使うパソコンモニタなどは200ppi程度がピクセルの粗さが気にならない目安であると読んだ記憶があります。この目安からすると、PD2705Uの163ppiはちょっと物足りない値です。しかし、私はMacBookの後方にPD2705Uを設置しており、MacBookよりも遠くにあるためか解像度に大きな不満はありません

コントローラー

 BenQ製品の多くは手元操作用のコントロラーが付属し、私が購入したPD2705Uにも付属していました。「ホットキーパックG2」という名称で、これがなかなか便利です。モニタ本体にもコントロールボタンが設置されているのですが、本体のボタンはほぼ使っていません。そもそもモニタ本体のコントロールボタンは背面にレイアウトされていて、日常的に操作することを想定していないように思われます。
 手元操作用のコントローラーは5つのボタンと1つのダイヤルで構成されていて、中央のダイヤルでほとんどのモニタ設定を操作でき、5つのボタンで色彩モードの切り替えなどをすることができます。
 このコントローラーは操作性やデザインは良くできているのですが、本体がプラで作りがやや安っぽいのが残念なところです。また、ボタンのアイコンが見づらく、白やシルバーなどで印字して欲しいところです。

写真 pc05_photo_07
ディスプレイ背面のコントロールボタン
写真 pc05_photo_08
ディスプレイ手元操作用のコントローラー(有線接続)

まとめ

 このモニタは、2024年に購入して良かったモノ上位に入る機材です。先にも記載しましたが、BenQは安価な製品を手がける海外メーカーという印象だったのですが、その印象がガラリと変わりました。適切なモデルを選択すれば、制作用のモニタとして利用できる信頼性のある製品だと思います。
 スピーカー性能はやや残念なレベルですが、音質を評価する目的ならばモニタスピーカーを利用します。それよりもグレードを落としたスピーカーということならば、MacBook本体のスピーカーを使います。中途半端にオーディオ性能にコストをかけて値上がりしてしまうくらいならば、今のままで十分だと思います。
 数年使用してみて、耐久性にも不満がなければ、次はこのメーカーのもう少し価格帯が上の製品に買い替えても良いと思っています。
 なお、今回ご紹介したBenQ PD2705UのAmazon商品ページはこちらです。

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