FX30のS-Log3とPP6を比較
Log映像のダイナミックレンジは広いの?

 Log映像はダイナミックレンジが広い、というのが特徴です。FX30のメーカーホームページには、S-Log3での撮影時に14+ストップのダイナミックレンジがあると記載されています。ダイナミックレンジが広いというと、より明るい部分やより暗い部分まで階調があるとイメージします。しかしFX30のS-Log3と、通常の階調表現であるピクチャープロファイル(PP)6の比較を何度か行ったのですが、毎回それほど違いがないという結果になっていました。Log撮影や階調を復元するノウハウが乏しいためだろうと、「FX30でS-Log撮影」、「FX30のS-Log映像をDe Log」でS-Log3映像のダイナミックレンジを広く使う方法を検討した上で、改めてS-Log3とPP6の比較を試してみたのが今回の内容です。

S-Log3とPP6比較 1

 輝度差の大きい被写体を選んでハイライトがクリップするギリギリ手前の絞りで撮影し、暗部にどの程度の階調が記録されているかを比較しました。PP6で撮影した映像を未補正のまま比較するべきか悩んだのですが、S-Log3の映像はLUTを適用するなり階調の復元をするなりといった補正を前提にしているにもかかわらず、PP6の映像だけ未補正というのはフェアでないし、実際にはPP6で撮影した映像にも多くの場合色補正を加えるので、双方とも補正ありで比較することにしました。
 S-Log3、PP6共に見栄えの良い露出やコントラストであるかよりも、ハイライト部からシャドウ部まで十分に階調が保たれているかを確認する目的で補正を行っています。そして、S-Log3映像とPP6映像が同じような階調表現になるよう補正しています。
 S-Log3/PP6 比較動画c05_movie_01はPP6をISO64で、S-Log3をCine EIのISO800で撮影してFinal Cut Pro(以下FCP)のカラーボード、カラーカーブで階調の復元をして比較しています。比較動画には数カットの風景映像が、

  • PP6 ISO64未補正
  • PP6 ISO64補正あり
  • S-Log3 Cine EI800未補正
  • S-Log3 Cine EI800補正あり
  • 補正したPP6とS-Log3を左右で比較
  • 補正したPP6とS-Log3を300%に拡大して左右で比較

の順で並んでいます。

c05_movie_01 S-Log3/PP6 比較動画 1

 300%に拡大した映像は、暗部の描写の違いを高感度ノイズの程度と共に比較するために作成しました。300%拡大映像を比較した印象が以下です。

【神社の楼門】300%拡大
 屋根の継ぎ目部分の暗部で、S-Log3の方が階調が残っているように見えます。

【神社の拝殿】300%拡大
 S-Log3とPP6でほとんど差はないようです。

【寺院のお堂】300%拡大
 S-Log3の方がお堂内の階調が僅かに多いように見えます。

【寺院の山門】300%拡大
 S-Log3の方が山門の屋根下部分の構造物や彫刻に、僅かに階調が多いように見えます。

寺院の屋根】300%拡大
 S-Log3とPP6でほとんど差はないようです。

 全体にS-Log3とPP6で僅かに差があるといえばあるかな、といった曖昧な印象です。正直なところ、FCPのカラーボードやカラーカーブのごく僅かな調整操作の違いで上記のような差が出てしまい、操作の誤差なのかダイナミックレンジの違いなのか判断しづらいところです。
 そもそもダイナミックレンジ14ストップとはどのくらいの明暗差で、どのくらいの輝度差の被写体で威力を発揮するのでしょうか。

ダイナミックレンジ14ストップとは?

 ダイナミックレンジの判定はどのように行うのでしょうか。ネットで調べてみると、「cinema5Dカメラテストラボ - ダイナミックレンジテストの方法について」というページで、ダイナミックレンジの測定について詳しく解説していました。
 上記のページで使用している「Xyla 21バックライト透過チャート」とは、要は21個の窓に1絞り分づつ濃度差のあるNDフィルタを一つづつ取り付け、一つの窓はスヌケにしたものと考えて良いと思います。そのチャートを撮影し、21絞り分の明暗差がある窓を透過した光がどの程度の明るさに写っているかを、映像の波形情報と画像の見た目、或いはソフトウエアを使って判定しているようです。この時、暗い方の窓が周囲の黒い部分と区別できるギリギリまでを確認して、何絞り分の窓が黒に埋没せずに識別できるかで、ダイナミックレンジ何ストップと判定しているわけです。
 ソフトウェアを使った判定は難しいですが、映像の波形情報と画像の見た目での判定ならできそうな気がします。

なんちゃってダイナミックレンジテスト

 今回比較しているFX30のS-Log3とPP6では、どのくらいダイナミックレンジに差があるのでしょうか。S-Log3については、FX30の商品ページに14+ストップと記載がありますが、PP6については情報がありません。
 上記のように判定用のチャートを入手して撮影してみれば一発なのでしょうが、そのためにテストチャートを購入するのは勿体無いような気がします。NDフィルタを沢山並べても良さそうですが、必要なNDフィルタの枚数を計算すると、手持ちのフィルタでは足りそうにありません。
 要は光量に測定したいダイナミックレンジと同等の絞り分の差をつけて、白い紙などを撮影すれば良いわけです。白紙よりはグレーチャートを撮影しておいた方がそれぞれの絞り値での階調差が確認できると思い、黒いプラスチックボードにコダックのカラーチャートとグレーチャートを貼って撮影してみました。

c05_fig_01

 c05_fig_01は、グレーチャートの白がクリップする直前の信号レベルに収まるように照明と絞りを調節した状態です。右側からだけ照明を足して明るさを調節したので画面右の方が明るくなっていますが、グレーチャートのAのマスにだけ注目すれば良いのでとりあえず気にしないで下さい。
 FX30のS-Log3で14+ストップということなので、このチャートを1絞りづつ暗くして15絞り分撮影します。レンズの絞りだけでは15絞り分の調整ができないのでシャッタースピードも併用していますが、ISO感度は固定したままにしました。センサーに届く光量差でテストしなくては、センサーのダイナミックレンジの比較にならないし、「FX30でS-Log撮影」で試したように、感度変更によってダイナミックレンジが変化する可能性もあるためです。設定感度はc05_movie_01と同様にS-Log3がCine EIのISO800、PP6がISO64です。厳密にはシャッタースピードも固定しないと、何らかの影響があるかもしれませんが、そこは「なんちゃって」なので諦めます。なお、暗部の階調がどの程度再現されるかを比較するのが目的なので、明るい方5絞り分は省略しました。

黒を0IREに補正して比較

 S-Log3とPP6の比較をするにあたって、S-Log3の映像が未補正の状態だと暗部の輝度レベルが高く、白黒の差を見分けやすくなってしまいます。FCPのカラーボードを使って、S-Log3で記録できる上限の白を100IRE、下限の黒を0IREに補正しています。この設定について詳しくは、「FX30のS-Log映像をDe Log」の「FCPでLog映像なら、付属の色補正ツールが手っ取り早くない?」の項をご覧ください。PP6の映像は未補正の状態です。補正したチャート画像から、グレースケール部分のみを切り取って並べたものがc05_fig_02です。
 FCPのモニタ表示や書き出したpng画像は判別するのに十分な階調がありましたが、掲載した画像はjpgの中圧縮なので暗部の階調が同一色にまとめられている箇所が多く、ちょっと判別しづらいかもしれません。また、ご覧頂くモニタの調整具合によって、暗部がどの程度再現されるかに差があります。
 S-Log3の+10から+14、PP6の+8から+12あたりがグレーチャートのAのマスと黒地の区別がつく微妙なところだと思います。

c05_fig_02

 S-Log3の+10から+14、PP6の+8から+12のルミナンス波形のスクリーンショットがc05_fig_03です。先の「cinema5Dカメラテストラボ - ダイナミックレンジテストの方法について」で判定の基準にしていた映像波形の形状的には、S-Log3で+12、PP6で+10がチャートのAのマスを黒地と区別できる下限といえそうです。画像c05_fig_02の見た目としては、S-Log3で+11、PP6で+9といったところでしょうか。大雑把なセッティングで行った簡易なテストにしては、いい線いってるかなと思いました。

FCP画面 c05_fig_03
ルミナンス波形画像を並べたもの

LUT適用で比較

 S-Log3の補正をカラーボードではなく、LUTを適用したものも作成してみました(c05_fig_04)。左がS-Log3にLUTを適用したものです。右はPP6未補正の映像で、c05_fig_02右と同じものです。
 結果はS-Log3で+12がチャートのAのマスと黒地を判別できる下限でしょうか。c05_fig_02で、白レベルと黒レベルの調整だけをした場合と同様の結果です。S-Log3にLUTを適用するとコントラストが上がるので、白と黒を判別できる下限が狭まってしまうかと思ったのですが、それほどの変化はありませんでした。LUTを適用することで白が110IREまで伸長されるので、コントラストの増加による黒つぶれ効果が信号レベルを広く使っていることと相殺されているのかもしれません。

c05_fig_04

 S-Log3にLUTを適用したルミナンス波形のスクリーンショットがc05_fig_05です。LUTの適用でコントラストが上がったことによって黒部分が圧縮され、+12でのAマスの波形の高さがc05_fig_03上の波形に比べて少し低くなっています。黒の信号の振幅も狭まっているので、相対的には+12が白と黒を識別できる下限としたままで良いか、或いは+11に変更するべきか悩ましいところです。

c05_fig_05

未補正で比較

 S-Log-3を未補正のものも比較してみます。S-Log3は黒レベルが8IRE程度なので、PP6も同様の黒レベルに補正して両者を比較する画像を作成してみたものがc05_fig_06です。
 こちらの画像だとグレーチャートのAのマスを、S-Log3で+13、PP6で+11でも判別できそうです。チャートの背景を黒のプラスチックボードではなく、ビロードなど反射の少ない素材にすればもう少し判別できるストップ数を稼げたかもしれません。
 ただし映像波形の形状としては、ほぼc05_fig_03の形のまま上に移動しただけなので、S-Log3で+12、PP6で+10が白と黒を判別できる下限という判断は変更しなくて良いと思います。

c05_fig_06

 この程度の差であればPP6の方は比較的暗部を持ち上げてもノイズが目立たないため、S-Log3と同程度の階調再現まで補正できそうな気もします。実際にPP6の+12の映像を補正してみたものがc05_fig_07で、未補正のS-Log3に対してPP6の黒レベルや階調を揃えるように調整してみました。

FCP画面 c05_fig_07
S-Log3とPP6を補正した画面のスクリーンショット

 c05_fig_07は画面とルミナンス波形を並べた方がわかりやすいので、書き出し画像ではなくスクリーンショットです。ほぼまっ黒で、ルミナンス波形でもほとんど平らに見えたPP6の映像を補正してみると、チャートの画像が出てきました。しかしS-Log3とPP6で、黒の信号の振幅を揃えると、PP6の方が画面全体の明暗差が少なくなってしまいます(c05_fig_07)。双方の明るさが揃うよう調整することも可能なのですが、そうするとPP6のノイズの程度はS-Log3よりもだいぶ悪くなってしまいます。大雑把に「写っている」という程度まで揃えることはできても、細かな階調表現ではS-Log3の方が僅かに勝るようです。
 雑な「なんちゃって」テストではありますが、S-Log3とPP6で同じ条件で比べています。S-Log3とPP6のダイナミックレンジの差は未補正時で2ストップ程度とみて良いのではないでしょうか。しかし補正をしてしまうと、その差は微妙なものになるようです。

Log撮影はフィルム撮影に似ている?

 S-Log3とPP6のダイナミックレンジを比較するにあたって、S-Log3は実際に使用する際のように階調の復元をした状態で比べるべきだと思っていたのですが、そうではなく未補正の状態でダイナミックレンジを判定するのが正しい方法なのかもしれません。それは、Log撮影がフィルム撮影に例えられることと関係があります。
 Log撮影がフィルム撮影に似ていると表現されることがありますが、実際のフィルム撮影では様々な感度のフィルムを使い分けて撮影をするので、Base ISOに固定してのLog撮影とはだいぶ異なる印象があります。また、ネガフィルムのダイナミックレンジはかなり広いものの、それをプリントしたものはそれほどでもありません。もちろん映写機の光量など視聴条件によって違いはあるでしょうが、プリントフィルムは比較的コントラストの高い映像だと思います。
 なぜLog映像がフィルム撮影に似ているといった例え方をされるのかには、Log映像の元々の用途に理由があるようです。前回、De Logという文言をご紹介する際にリンクを掲載したナックイメージテクノロジーのページに、Logガンマはフィルムをデジタル処理するためにコダックが開発したCineonという技術のために生み出されたものであると記載されています。Log映像はフィルム映像をデジタル処理する際の、ダイナミックレンジ確保のために考案されたようです。フィルムのデジタル処理に関連した技術であることから、Log映像とフィルム撮影が結びつけられる機会があるのかもしれません。
 「写るんです」という使い捨ての簡易なカメラで撮影したフィルムをプリントするサービスがあります。これは、ネガフィルムには相当なダイナミックレンジがあることを活用したサービスで、簡易なカメラで撮影したために明るさがバラバラなネガフィルムからでも、プリント作業である程度明るさを揃えた写真に仕上げることができます。こういった、広いダイナミックレンジを持つネガフィルムをデジタル映像に変換するために考案されたのがLog映像のようです。
 つまりLog映像はネガフィルムの広いダイナミックレンジを可能な限りカバーするよう記録し、プリントフィルムに相当するものとして完成したデジタル画像を作成する際に必要な階調を選んで色彩調整をする、いわばデジタル画像でのネガフィルムのような役割のために考案されたということではないでしょうか。そのように未補正のLog映像をネガフィルムに相当するものとして捉えると、ダイナミックレンジ判定は未補正の状態で行うのが正しい方法のように思います。「未補正で比較」の項で、S-Log3の白と黒の判別を画像の見た目では+13としたc05_fig_06左の画像です。改めてこのテストは、いい線いっていたのかもしれません。

S-Log3とPP6比較 2

 S-Log3とPP6のダイナミックレンジの違いは、双方とも映像を未補正の場合に現れるのだとすると、映像を補正した場合にはどの程度の違いが見られるのでしょうか。「未補正で比較」の項で+12の画像を補正したときに、僅かな階調の差が確認できました。つまり、12絞り以上の明暗差があるものを被写体にした場合に、もう少し違いが見える可能性があります。
 屋外の明るさを露出計で測ってみると、快晴時の日向と建物の影などの少し薄暗い日影で、8から9絞り程度の差です。それよりもさらに明暗差のある被写体で試してみたのがc05_movie_02です。被写体の背後に太陽を配置して、そこから漏れる光がクリップしない露出に設定するなど、c05_movie_01よりも光量差の大きいものを選んでみました。比較動画はc05_fig_01と同様に、

  • PP6 ISO64未補正
  • PP6 ISO64補正あり
  • S-Log3 Cine EI800未補正
  • S-Log3 Cine EI800補正あり
  • 補正したPP6とS-Log3を左右で比較
  • 補正したPP6とS-Log3を300%に拡大して左右で比較

の順に並んでいます。

c05_movie_02 S-Log3/PP6 比較動画 2

 c05_movie_02では暗部にどの程度階調があるかを確認する目的で、画面が多少ノイズで荒れても暗部の明度を上げる補正をしています。300%拡大映像を確認した印象が以下です。

【逆光の木々】300%拡大
 S-Log3の方が木の枝の立体感が再現されている、つまり陰影がはっきりしているように感じます。

【鐘楼】300%拡大
 S-Log3の方が木目がはっきりと表現されているように感じます。

【手水舎の龍】300%拡大
 ステンレスに反射する太陽がクリップしないレベルまで絞り込んでいます。龍の背の部分など、微妙にS-Log3の方が階調が多いようにも感じます。

【逆光の山門】300%拡大
 擬宝珠や木の部材の明暗差がS-Log3の方が多いようです。

【神社の摂社】300%拡大
 どの映像も、S-Log3とPP6で概ねルミナンス波形の高さが揃うようにカラーボード、カラーカーブの調整をして、画面全体の輝度が同じになるようにした上で暗部の比較をしています。この映像では両者に差がないか、或いはS-Log3の方が階調が少ないようにも見えます。

【高架下の暗所】300%拡大
 「xx設備」と書かれた扉の右側にあるシャッターのような部分で、S-Log3の方が下の暗部まで横線を識別できるように見えます。

 全体にごく微妙な差はあるようですが、補正時のちょっとした誤差で上手く差が見えない場合もあるようで、「感じます」といった表現以上に断定的な言い方のしづらい違いです。それでも、「未補正で比較」の項で+12の映像を補正して見られたS-Log3とPP6の違いは、実際の景色などの映像でこういった微妙な差に現れているのかもしれません。
 S-Log3のダイナミックレンジ云々以前に、PP6で未補正時にまっ黒だった部分に、これだけの階調が記録されていることが驚きです。4:2:2、10bit記録の威力でしょうか。この比較はFCPで最適化ファイルを作ってのテストなので、ProRes変換したファイルが色補正への柔軟性が高いのかもしれないと思い、最適化ファイルを削除してレンダリング結果を確認してみたのですが差はありませんでした。考えてみればレンダリングファイルもProResファイルなので、最適化ファイルのあり、なしで画質の違いは発生しません。つまり色補正をしたその結果を画面に描写する段階で、すでにProResファイルへの変換が行われた画像を見ていることになります。そもそも編集アプリを使用すること自体が、完成ファイルに書き出すという意味でのファイル変換を目的にしたものなので、操作過程でのファイル変換について気にしてもあまり意味がないかもしれません。

再度なんちゃってテストの映像を確認

 実際の景色で暗部の階調再現の比較をして、「未補正で比較」の+12の映像を補正した際のS-Log3とPP6の違いに似た階調表現の差があるように見えました。では、+12より暗いものではどうでしょうか。試しに、S-log3、PP6ともにほぼ黒の信号だけだった+13、+14、+15の映像を、高感度ノイズを気にせず暗部を持ち上げてみました。
 S-Log3で撮影した+13、+14、+15の映像にFCPのカラーカーブを適用し、黒レベルは動かさないようにしつつ、グレー階調だけを実用上はあり得ない程に持ち上げてみたのがc05_fig_08左です。c05_fig_08右は、PP6で撮影した+13、+14、+15の黒レベルをS-Log3の黒レベルに揃えるよう調整した画像です。

c05_fig_08

 S-Log3、PP6双方とも+13、+14くらいまでグレーチャートのAのマスを見分けることができます。これは、S-Log3、PP6どちらも同程度の階調差が記録されているとみて良いのではと思います。つまり、センサーから読み出した画像はS-Log3もPP6もほぼ同程度の写りをしていて、その後センサーからの信号を整えてピクチャープロファイルなどの色付けを行う段階で、暗部の階調描写に差が出ているということではないでしょうか。
 ただし、S-Log3の方がグレーチャートの各マスごとの明るさの差がはっきりしているように見えます。S-Log3ではBase ISO設定をしていることや、対数変換で暗部に階調を多く振り分けたことで、PP6よりも僅かに暗部の階調表現に優れているようです。

まとめ

 S-Log3の方がPP6よりも明部や暗部により多くの階調が記録されているという差が出るのは、双方ともに未補正の状態を比較した場合のようです。映像ファイルそのものに記録されている大雑把な意味でのダイナミックレンジはS-Log3もPP6も大きな差はないと考えてよさそうです。PC上で映像の明暗を補正する場合には、両者とも大まかには同程度の明暗差を表現することが可能です。ただし、S-Log3の方が暗部の明暗階調の繊細さが僅かに高いと言えそうです
 通常モードでの記録に比べて暗部の階調表現に優れているLog映像ですが、「FX30でS-Log撮影」や「FX30のS-Log映像をDe_Log」で記載したとおり、暗部の階調表現にデータ量を多く割いた代わりに明部の階調は目減りしており、ハイライト部の色補正の柔軟さは通常モードでの記録(今回の場合はPP6)の方が優れているように感じます。また、S-Log3での撮影では、「FX30でS-Log撮影」で記載したように、高輝度部分で滲んだような描写が目立つなどのデメリットもあります。明らかにどちらが優れているということは言い難いように感じます。
 3回に分けてFX30でのS-Log映像を試してみましたが、ここで試したのはS-Log3のISO800とPP6のISO64だけです。中庸感度や高感度では違った結果が見られるかもしれません。

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