FX3/30用XLRハンドルユニット
SONYのFX3、FX30用のハンドルユニットで、私はFX30とセットのものを購入しました。このパーツは、型番XLR-H1として定価82,500円(税込)でも販売されています。ただし、FX30のハンドルなしが希望小売価格286,000円(税込)なのに対して、FX30にハンドル同梱のものが希望小売価格341,000円(税込)と差額55,000円なので、カメラ本体とセットで購入した方が割安です。
カメラのトップハンドル、ガンマイク取り付け用のホルダーとマイクアンプが一体になったパーツです。有り体にいうと、カムコーダータイプのハンドルとマイク接続部分をFX30に後付けできるようにした商品です。
INDEX
デザイン
ハンディカムカメラの上位機種に少し手を加えて業務用機に仕立てたカメラが登場した頃からのお馴染みのデザインで、ガンマイクホルダー、マイクアンプ、ハンドルを一体にしたパーツです。このパーツを取り付けると気分は業務機です。音声収録の柔軟さから仕事の時は取り付けますが、サイズ感的にFX30の小ささが損なわれるようで若干残念なデザインだと思います。ハンドル部分の背がもう少し低くても良かったのではとか、ガンマイクの取り付け部分がもう少し後ろでも良かったのでは、など細かなところでもう少しデザイン的に工夫や検討の余地があったのではと思います。マイクの取り付け位置については、ガンマイクをaudio-technica AT4073a、レンズをE PZ 10-20mm F4 Gの組み合わせにすると、ガンマイクの先端が画面に映り込むギリギリの位置になります。
また、カメラ装着時のサイズ感とは別に、縦方向、横方向様々な方向にパーツが取り付けられているので、カメラバックへの収納時に場所を取るのも悩みところです。
また、カメラ本体のアクセサリーシューを使って取り付けるので、このXLRハンドルを取り付けると他の機材を取り付けるアクセサリーシューがなくなってしまいます。小型ライトの取り付け用などにXLRユニット部分にコールドシューを付けておいて欲しかったところです。ただ、こういった細かな部分を見落とさないSmallRig社は大したもので、ちゃんとこの部分にシューを増設するパーツを販売しています。MD3990という型番のパーツで、ハンドルの1/4インチネジ穴を使って取り付け、XLRユニット上部にコールドシュー1つと複数のネジ穴を追加できます。
「SmallRig FX3 / FX30 XLR オーディオモジュールトッププレート MD3990」のAmazonサイトへのリンクはこちらです。
コールドシューは、RODEのWireless GOの設置などにも役立ちます。私は、ハンドルの後部に他のカメラで使わなくなったコールドシューも付けています。コールドシューを2つ設置しておくと、前部に小型ライト、後部に小型のワイヤレスマイク受信機を取り付けるなど、複数の機材の取り付けに便利です。(ライトは殆ど使わないのですが…)
SONYのガンマイクホルダーはかなり昔から直径19mmのガンマイクにはゴムのスペーサーパーツを挟み込んで取り付ける仕様で、このXLRハンドルも同様です。そして、このスペーサーは面倒なことに別売です。直径19mmのマイクを愛用している私としては、このスペーサーを同梱して欲しいところです。
本体との接続
カメラへは、カメラ本体のシューとその左右に設置された1/4インチネジ穴を使って取り付けます。カメラのシューはSONYが「マルチインターフェイスシュー」と呼ぶ多数の電気接点が設けられた特殊な仕様で、XLRアダプタの電源や音声信号はシューの電気接点を通してやりとりされます。
カメラ本体、XLRハンドル共にシュー部分には多数の電気接点が設置されているため、保護キャップが取り付けられています。この保護キャップの取り外しと保管が案外面倒です。機種によっては、接点部分を保護するために自動で開閉するシャッターが設置されていたものもあったと思いますが、そういった仕様にできなかったのでしょうか。
ハンドルには「HANDLE AUDIO」のON・OFFスイッチがあり、XLRハンドル装着時でもカメラ本体に内蔵されたマイクを使用して録音することもできます。しかし、カメラ本体のマイクの前方向を遮るようにハンドル取り付け基部があり、カメラ本体のマイクの収音条件としてどうだろうかと思います。ところが、実際のところはハンドルあり、なしでカメラの内蔵マイクでの録音を試してみると、案外神経質になるような影響はないようです。
機能
コンデンサーマイクへのファントム電源供給可能なモノラルINPUT 1・2と、ステレオINPUT 3の合計3つの音声入力端子を装備しています。カメラ本体の設定により、モノラル2チャンネルに加えステレオのLR2チャンネルと、合計4チャンネルの録音が可能です。小型カメラでの音声収録機能は2チャンネルの仕様のものが殆どという中で、最大4チャンネルの録音が可能なのは便利です。欲を言うと、INPUT 3のステレオチャンネルも左右1チャンネルづつ個別にレベル調整できると良かったのですが、ステレオチャンネルのフェーダーは1つしか設置されていません。
また、INPUT 1の音声信号をカメラのCH1・CH2にパラレルに入力することもでき、ゲイン設定は共用ですが録音フェーダーのボリュームを個別に設定することができます。この機能は、HXR-NX5Jのマニュアルをみると既に実装されており意外と以前からあったようですが、極端に音量の異なる音源の録音時などにCH1とCH2で録音レベルを変えて記録することができ、とても便利です。
メーカーの商品ページを見ると、XLRユニット内でAD変換まで行い、マルチインターフェイスシュー部分ではデジタルデータを伝送しているようです。つまり、マイクアンプはXLRユニット部分に搭載されているようです。このマイクアンプも音質・SN共に良い品質だと思います。数年使ったBMPCC4Kと比較するとやや低音の成分が少なく感じますが、BMPCC4Kでの撮影素材では編集時にローカットすることが多かったので、むしろちょうど良いと感じています。
各入力は音量調節をマニュアルとオートに切り替えることができます。個人的にはオートではなく、リミッターを搭載して欲しかったところです。
カメラ内蔵マイクの録音レベルを調整するには、カメラメニューを操作しなくてはならないのですが、XLRハンドル使用時はユニットのフェーダーで録音レベルを調整でき、必要な時に即座に微調整ができる点など、録音という作業は本来こういった操作感であるべきだなと感じます。
入力プラグ
INPUT 1・2は、XLRとTRSバランス接続とのコンボプラグです。TRSバランス接続は、3極の6.3mmプラグ(ステレオ標準ジャック)をアース付きモノラル端子として使用する規格です。INPUT 3は3.5mmステレオミニプラグで、プラグインパワー対応です。
こうやって書いていて気づいたのですが、この製品は音響機器の部類に入るにも関わらず、各入力端子の細かな仕様がホームページや説明書に記載されていません。以前はこういった機器の場合、入力レベルやインピーダンスといった細かな仕様が公開されていたのですが、最近はあまり見かけなくなりました。「コンボプラグ」といった音響仕様を跨いだプラグの登場で、各種入力端子の規格の許容値を大きめに設定するようになっているのでしょうか。
BMPCC4Kを使って案外便利に感じたのがminiXLRプラグです。一般的なXLRプラグに比べて小型なので機器のサイズを小型化できるだけでなく、ケーブルにも細いものを使用するので撮影時の荷物を小さくまとめることができます。せっかく小型化したカメラ本体に比べて、XLRユニット部分はアンバランスに大きく感じます。採用するプラグの規格を変更しても良いのではと感じました。
全体
E PZ 10-20mm F4 Gのページでも記載しましたが、マイクのショックマウントの防振構造が弱く、ズームモーター音を僅かに拾ってしまいます。カメラのスイッチ操作音やグリップを握る音を防ぐ意味でも、もう少ししっかりとしたショックマウントにして欲しいところです。
私はこういったSONYのマイクアンプパーツを使うのはminiDV時代のDSR-PD150、AVCHDフォーマットのHXR-NX5J以来ですが、少しずつ操作性や音質を改善してきたのだなと実感します。モノラル2チャンネルに加えてステレオ1チャンネル、合計4チャンネルの収録ができるなど、収録の柔軟性がアップしていることに驚きました。音質も、PD150の頃はマイクアンプの性能を貧弱に感じたのですが、このXLRハンドルではかなり向上しているように感じます。このクラスの収音機材としては過不足ない出来栄えだと思います。FX30本体の4チャンネル録音機能を活かす意味でも、セットで購入するのがお勧めです。なお、4チャンネル録音はXLRハンドルや、その他4チャンネル録音に対応したアダプタを接続した場合のみ可能です。カメラ本体のみでも、カメラマイクと3.5mmプラグからの入力を4チャンネルに振り分けて録音できると便利だと思うのですが、それはできません。
単体価格の8万円はちょっと割高感がありますが、TASCAMがよく似た製品を6万円ほどで販売しているのを考えると、セット価格の5万円程度というのは適価か、ほんの少しお買い得かもしれません。