FCP、基本ストーリーラインに何を置く? 2 〜オーディオクリップを基本ストーリーラインへ

 前回、音声に言葉を伴ったクリップは優先的に基本ストーリーラインへ配置するのが望ましいのでは、という話を記載しました。インタビュー映像のように映像クリップが言葉を伴っている場合は、ビデオクリップを基本ストーリーラインへ配置することになり、自然なクリップの配置だと思います。こういった場合とは別に、ナレーション音声を中心に編集するといったケースもあります。この場合、ナレーション音声は音声のみのオーディオクリップである場合が多いと思います。この場合も編集内容によっては基本ストーリーラインにナレーションクリップを配置した方が編集効率が良い場合があります。
 基本ストーリーラインに配置できるのは、ビデオクリップのみではありません。pngなどの画像クリップ、テロップ用のタイトルクリップ、そしてオーディオクリップを基本ストーリーラインに配置することもできます

オーディオクリップの編集単位

 ビデオクリップは、長さの調整や位置の調整をする際に1フレーム単位でしか調整できません。しかし、音声クリップは1フレームの長さよりもはるかに細かく移動やトリミングをすることができます
 基本ストーリーラインに配置したクリップに接続したクリップとして配置したナレーションやBGMなどのオーディオクリップは、in点やout点、位置の移動をする際に1/100秒単位で操作量を示す値が表示されます。
 100_fig_01では、基本ストーリーラインに配置したビデオクリップの下段に配置されたオーディオクリップにトリミングツールで使用箇所を移動する操作を加えているところです。オーディオクリップからは「-00:01.26」と移動量を示す値が吹き出し状に表示され、1と26/100秒つまり1.26秒前方に移動していることを示しています。表示される値が1/100秒単位なだけで、実際の操作はそれよりも小さな動きをしています。恐らくは、サンプル単位での調整が可能なのではと思います。

FCP画面 100_fig_01
接続したオーディオクリップにトリム操作などを加えたとき、その操作量は1/100秒単位で表示される

 ここで言う「サンプル単位」とは、オーディオをデジタル化する際の時間方向の単位で、1秒間をいくつのデジタルデータに分割するかといった細かさを指します。例えばサンプリングレート48kHzといった場合、1秒間を48,000のデジタルデータに分割してデジタルデータ化します。
 このように、オーディオクリップは編集操作がとても細かく行えるため、言葉をつなぎなおしたり音楽を編集する際には微妙な調整が可能になります。

オーディオクリップと基本ストーリーライン

 本来はビデオクリップよりもはるかに細かく編集できるオーディオクリップですが、オーディオクリップを基本ストーリーラインに配置すると、そのタイムラインに設定したフレームレート単位でしかトリミングや移動といった操作ができなくなってしまいます。
 100_fig_02では、基本ストーリーラインに配置したビデオクリップの間にオーディオクリップを配置しています。オーディオクリップの使用箇所をトリミングツールを使って移動しているのですが、表示される単位はフレーム単位になり、実際の操作もフレーム単位でしか調整ができません。(表示条件によっては1/100秒単位の表示になる場合もあるようですが、その時も操作自体はフレーム単位でしか行えません。)

FCP画面 100_fig_02
基本ストーリーラインに配置したオーディオクリップにトリムなどの操作を加えたとき、操作量を示す値はフレーム単位となり、実際の操作も1フレーム単位でしか動かすことができない

 このような場合、オーディオを展開」し、展開したオーディオ部分を操作することで、フレーム単位に縛られずにトリミングや移動といった操作が可能になります。100_fig_03を見ると、操作量を示す値が1/100秒単位で表示されているのがわかります。この時、実際には基本ストーリーラインの外に配置した場合と同様に、1/100秒よりも細かな編集操作が可能です。

FCP画面 100_fig_03
基本ストーリーラインに配置したオーディオクリップの展開したオーディオ部分を操作することで、1フレーム単位に縛られずに細かな編集ができる

 オーディオコンポーネントを展開」してオーディオコンポーネント部分を操作しても、同様にフレーム単位よりも細かな編集が可能です。

ビデオクリップのオーディオトリム

 ビデオクリップの場合、基本ストーリーラインの外に配置したクリップであっても、基本的にはフレーム単位でしか編集操作を行えません。しかし、ビデオクリップのオーディオやオーディオコンポーネントを展開して展開したオーディオ部分を編集操作することで、フレーム単位以下の細かな操作が可能になります。
 オーディオをトリムするなどの操作を1フレーム以下の細かさで行なったとき、ビデオ部分もオーディオのトリム操作に伴って一緒に移動します。この時、ビデオ映像のフレームはどのような扱いになっているのかが気になるところです。
 100_fig_04は、1フレームづつカウントする映像に2フレームに一回のクリック音を付けたビデオクリップです。

FCP画面 100_fig_04
1フレームづつカウントする映像に2フレームに一回のクリック音を付けたビデオクリップ

 このビデオクリップのオーディオを展開して、展開したオーディオ部分をトリム操作しているのが100_fig_05です。上の100_fig_04とクリップの開始位置を比較すると、1フレーム以下の細かさで音声と共に映像もスライドしているのがわかります。

FCP画面 100_fig_05
展開したオーディオ部分をトリム操作することで、音声と共に映像も1フレーム以下の細かさでスライドする

 この時、カウント「011」のフレームが再生ヘッドの位置にある限りはビューア画面に「011」と表示され、「012」フレームの部分までトリム操作した時点でビューア画面に「012」と表示されます。つまり、フレームの途中から開始するビデオクリップが許容されているようです。フィルム映像やアナログビデオではフレームの途中でカットを切るといった操作は考えられなかったのですが、デジタル映像ならではの処理だと思います。
 ただし、こういったビデオクリップ内での1フレーム以下のトリム処理は、その処理をしたクリップのみに特別に適用されるようで、そのクリップをコピーアンドペーストすると、開始位置はリセットされるようです。
 100_fig_06は、判りやすいようにトリム操作をしたクリップの上段に同じクリップを「接続済みクリップとしてペースト」したものです。

FCP画面 100_fig_06
トリム操作をしたクリップ(下段)と、そのクリップをコピーアンドペーストしたクリップ(上段)を比較すると、コピーアンドペーストしたクリップはトリム操作がリセットされている

 下段にあるトリム操作をしたコピー元となるクリップに対して、コピーアンドペーストを行った上段のクリップはトリム操作前の100_fig_04と同様の音声波形の開始位置となっていて、下段のクリップに対して行ったトリム操作がリセットされているのが判ります
 複数のカメラを使って収録を行う場合、それぞれのカメラが撮影するタイミングを完全に揃えるためにはケーブルで接続して同期をとる必要があります。しかし、ビデオクリップを1フレーム以下でトリム操作できるのであれば、編集時に同期を補正することが可能になります。基本ストーリーラインとオーディオクリップの話からだいぶ外れてしまうので、カメラ同期の話はまた別の機会に記載します。

まとめ

 基本ストーリーラインに配置したオーディオクリップは、オーディオを展開かオーディオコンポーネントを展開して、展開したオーディオ部分を操作することで1フレーム以下での編集が可能になります。
 ただし、クリップそのものの移動やトリミングはフレーム単位での編集に縛られる不自由さや、それを避けるために編集操作をするたびにオーディオを展開する面倒な作業が伴います。オーディオクリップを基本ストーリーラインに配置しつつも、操作内容によって「ストーリーラインからリフト」と「上書きして基本ストーリーラインに置き換え」操作を組み合わせて、編集操作に適したトラックに移動させながら作業を進めた方が、柔軟に編集作業を進められるかもしれません。
 前回と今回、音声に言葉を伴ったクリップを基本ストーリーラインに配置することで、効率的に編集を進められるのではという内容を記載しました。しかし、編集内容によって様々だというのが実際のところだと思います。考え方の一例として参考にして頂ければと思います。

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