FCPの色補正 その8
ヒュー/サチュレーションカーブ
FCP(Final Cut Pro ファイナルカットプロ)の色補正機能、「ヒュー/サチュレーションカーブ」について記載します。
色を補正するというよりも、ピンポイントで色の色相や鮮やかさ、明るさを変化させ、映像の色彩を作り込んでいくような作業に適したツールです。
INDEX
ヒューとは?
「ヒュー/サチュレーションカーブ」では、「ヒュー」(色相)、そして「サチュレーション」(彩度・鮮やかさ)と「ルミナンス」(明度・明るさ・暗さ)の値を線に置き換え、それを操作することで色彩を変化させます。
「ヒュー」は色相です。色相環、或いは色環と呼ばれる、虹色の環があります。円環状に色が並んでいて、180度反対側には「補色」という、いわば「反対の色」が配置されています。
図 26_fig_01は、一般的な色相環の図とは少し色味が異なりますが、ビデオ映像で扱うRGBで生成される色で色相環を作成すると、こういった配色になります。色相環は、色相を円環状に図化したものです。
「ヒューを操作する」と表現するときに、この色相環を回転させることをイメージすると判りやすいです。
機能と操作
26_fig_02は、「ヒュー/サチュレーションカーブ」の画面です。この投稿の最後に記載する色補正操作をした状態で、いくつかのカーブにポイントが追加されています。
【ヒュー対ヒュー】
色相上の特定の色を指定して、その色だけ色相環を回転させるように変化させます。
ヒュー操作では、色相環を回転させるように色を変化させます。図 26_fig_03は、内側の色相環に対して、外側の色相環を45度時計回りに回転させています。
この時、白い三角形の矢印で示したように、赤を黄色に、青紫を赤紫に変換する、といったイメージです。「ヒュー対ヒュー」ではこの色の変換を、色相環上の指定した色に対して行います。
カーブの左右が色相の角度、上下が色相の回転角度に相当します。
例えば、赤だけを別の色に変えるといった操作ができます。調整する色は、ポイントを追加することで増やせます。
【ヒュー対サチュレーション】
色相上のある特定の色を指定して、鮮やかさを変化させます。左右が色相の角度、上下が鮮やかさの加減に相当します。
例えば、赤だけの鮮やかさを加減する、といった操作ができます。調整する色は、ポイントを追加することで増やせます。
【ヒュー対ルミナンス】
色相上のある特定の色を指定して、明るさを変化させます。左右が色相の角度、上下が明るさの加減に相当します。
例えば、赤だけの明るさを変える、といった操作ができます。調整する色は、ポイントを追加することで増やせます。
【ルミナンス対サチュレーション】
ある特定の明るさを指定して、鮮やかさを変化させます。左右が明暗、上下が鮮やかさの加減に相当します。
例えば、明るい部分を鮮やかに、暗い部分をくすんだ色味にする、といった操作ができます。調整する明るさは、ポイントを追加することで増やせます。
【サチュレーション対サチュレーション】
ある特定の鮮やかさを指定して、鮮やかさを変化させます。左右が鮮やかさの程度、上下が鮮やかさの加減に相当します。
鮮やかな部分の鮮やかさを加減する、くすんだ部分の鮮やかさを加減する、といった操作ができます。調整する鮮やかさは、ポイントを追加することで増やせます。
【オレンジ対サチュレーション】
マニュアルによると、オレンジ色が肌色に近い色なので、プリセットとしてオレンジ色を設定しているそうです。スポイトツールで画面上の色を指定して、調整することもできます。
つまり、オレンジ色か、或いは指定した色の明るさを指定して、鮮やかさを変化させます。
左右が明暗、上下が鮮やかさの加減に相当します。
「ルミナンス対サチュレーション」機能を、特定の色に絞った操作にしたものです。調整する明るさは、ポイントを追加することで増やせます。
各カーブで、スポイトボタンの右にあるUターンするようなボタンをクリックすると、全てのポイントをリセットできます。ポイントを一つづつ消すには、ポイントを選択してdeleteキーを押します。
右上の「表示」という部分をクリックして、「単一カーブ」の表示に切り替えることもできます。「H v H」「H v S」などのボタンで、それぞれのカーブ画面に切り替えます(26_fig_04)。
「H」が「ヒュー」、「S」が「サチュレーション」、「L」が「ルミナンス」、vは「対」を意味します。
高円寺の山門
毎度ですが、カラーボードやカラーカーブで補正した、高円寺の山門の写真を補正してみます。補正前の画像は、リンクしたページでご覧ください。
ヒュー対サチュレーションで、寺標を中心とした、オレンジ色の鮮やかさを下げています。また、空の青を少し強調しています(26_fig_05右上)。
ルミナンス対サチュレーションで、画面の暗部の鮮やかさを少し上げて、空や山門の木部の彩度を増しています。また、画面の明部の鮮やかさを落として、寺標など、ライトに照らされた部分のオレンジ色を弱めています(26_fig_05右下)。
色温度の異なる光が混在する環境で撮影した画像なので、「色温度を変換する」のではなく、特定の色を弱める、取り除くといった方法も良い手段だと感じました。